女優藤山直美(60)がテレビ東京開局55周年記念ドラマ「最後のオンナ」(来年1月6日放送、午後8時)に主演し、大人の恋に落ちる浅草のスナックママ役で新春を明るく彩る。17年の乳がん手術を経て、4年ぶりのドラマ復帰。還暦を迎えた藤山に、役者としてのこれからを聞いた。

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姿を見せた藤山は、開口一番「楽しい話しましょ」と朗らかにほほ笑んだ。

4年ぶりとなるドラマでは、岸部一徳(72)深津絵里(46)香川照之(54)を相手に丁々発止のホームコメディーを演じる。昭和の香りが漂うが「おじさんとおばさんばっかり出てるの、ええんちゃいます? たまにはこういうアンティークショップみたいな芝居」と笑う。劇中では岸部と恋仲になる。老いらくの恋にもリアリティーを感じ、「私恋愛体質ですよ、確実に。70でも恋してると思う。80でもします」と言い切る。現在恋の予感はないと言うが、「今は恋するよりも病院通わなあかんから」。

17年3月に初期の乳がん摘出手術を受け、18年10月に舞台復帰した。体と向き合ういい機会ととらえ「ちょうどええ時に先生が肩たたいてくれはった」と振り返る。定期健診はしっかり予定に組み込まれており、「自己管理できないさかいに、来るぞ来月もっていうのに恐怖心をもらってます」。ちなみに、次の健診はクリスマスイブ。「トナカイのバイト断ったんです、2件。三越と松屋と」と大まじめな顔で答える姿は、どこまでも喜劇の人だ。

今年還暦を迎えた。年齢とともに変化を感じ「昔はね、自分を燃やす固形燃料が棚いっぱいに詰まってたんですよ。年いったり病気したりすると、それががだんだん減ってくる。その固形燃料を何に使うかっていうと、本職の舞台に使うと思いますよね」と話す。役者としての引き際を感じる時が来ても、「引退」を表明せずに表舞台を去りたいという。「言わん言わん。そんな仰々しい役者ちゃうもん私。最近引退ちゅう言葉が似合うたんは、イチローさんくらいちゃいます? 私は普通に暮らしてると思うよ。ご飯作って洗濯して掃除して」。どこまで舞台に立ち続けるかも「自然に任せます。人知の及ぶことじゃないです」。

ドラマは大人の恋がテーマ。自身は結婚しなかったことが心残りとも明かし「人の価値観や状況はそれぞれやけども、結婚して家庭持って、自分の子どもの顔が見たかったなっていうのが私自身の感想。私今度生まれた時も女がいいって言ってるの」。書いてもええよ、と隠すことなくオープンだ。「だって10年たったら70やで。いまさらあんた、ニイッて笑ろたってしゃあないもんね。歯周病しか見えへんねんもん」と気持ち良く笑った。

◆「最後のオンナ」 無愛想な老舗おかき屋社長、皆川雄一郎(岸部)は初恋の女性に似た浅草のスナックママ、山田美奈子(藤山)と恋に落ちる。美奈子が財産狙いであることを疑う娘(深津)と娘婿(香川)を巻き込み、父の最後の恋が騒動に発展していく。脚本は「Dr.コトー診療所」の吉田紀子氏、監督は「ドクターX~外科医・大門未知子~」の松田秀知氏。

◆藤山直美(ふじやま・なおみ)本名・稲垣直子。1958年(昭33)12月28日、大阪生まれ。父は藤山寛美。子役でデビュー。92年NHK連続テレビ小説「おんなは度胸」で全国区となり、06年「芋たこなんきん」に主演。舞台「おもろい女」で19年文化庁芸術選奨演劇部門の文科大臣賞を受賞した。血液型O。