緊急事態宣言下の困難をどう乗り切るのか、著名人にメッセージを寄せてもらう新連載「明日のために」。今回は、みのもんた(75)です。文化放送時代から53年間、放送の最前線を走ってきたみのは、「センセーショナルに扱いたくなるのがいちばん怖い」と、放送の使命を語っています。

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放送業界に入って53年ですが、出演者同士が間隔を空けるとか、ゲストがリモート出演とか、未曽有の放送現場に大きな衝撃を受けています。僕も「おもいッきりテレビ」や「朝ズバッ!」を長年やってきましたが、いまテレビにとって大事なのは、現実の姿を直視し、現状がどうなっているのかを把握して放送することです。

経験上、ワイドショーって毎日同じテーマが続くと、ネタ不足でやたらオーバーになったり、視聴者の興味を引く映像になったりしがちで、センセーショナルに扱いたくなるのがいちばん怖い。「トイレットペーパーの棚が空っぽです!」と一日中叫んで買い占め心理をあおったり、「武漢の封鎖が解除されました!」って一斉に明かりがつく様子を劇的に伝えたり。少しでも多くの人に見せたいという思いばかりに目がいくと、真実が伝わりにくくなってしまう。

テレビが伝える情報を100%信じてしまう人に対して、「1%くらい疑う気持ちを持つのも大事ですよ」と、考えてもらうのも放送として大事なこと。僕は局アナ出身だから、言葉も気になる。「濃厚接触者」って、変な言葉だと思ったよ(笑い)。いやらしいことしていないから自分は濃厚接触者じゃない、って誤った判断にもつながりそうだし。ロックダウンとかオーバーシュートとか、英語ばかり使うのもついていけない。

でも、出演者もスタッフも、経験したことのない状況と不安の中で本当に頑張って報道の使命を果たしている。ウイルスに関してはしっかり報道されていますが、「どうしたらいいか」はまだ両論併記がありすぎて伝わってこない段階ですよね。個人的にはそろそろ統一見解が出てきてもいいんじゃないかと。あと、年齢別の対処の仕方なんかも教えてほしい。お酒が好きだから日々“アルコール消毒”していますが、効果あるのかなあ(笑い)。

僕は水道メーター会社「ニッコク」の社長として社員の安全を守る立場でもあります。東京支社の社員全員、今週から4週間休みにしました。3月はじめにフロア消毒の業務用噴霧器を用意して、1時間ごとにオフィスの空気をきれいにするなど、できることは全部やっています。密閉空間のテレビのスタジオにもおすすめしたい。

「朝ズバッ!」から今まで、東日本大震災の被災地に数多くおじゃましてきました。その中で実感するのは、日本人の頑張り魂、我慢強さ、一致団結という素晴らしい魅力です。「あそこには行くな」とか間違った方向に団結してしまうと困ったことになりますが、黙々と頑張れる素質は未来そのもの。やれることをこつこつと、頑張っていましょう。(構成・梅田恵子)

◆みのもんた 1944年(昭19)8月22日、東京都生まれ。立大卒。67年文化放送に入社し、「セイ!ヤング」初代パーソナリティーを担当。79年に退社後、日本テレビ「午後は○○おもいッきりテレビ」、TBS「朝ズバッ!」の帯番組のほか、「どうぶつ奇想天外」「クイズ$ミリオネア」など多くのレギュラー番組を担当。05年、NHK紅白歌合戦で司会。今年3月末に日テレ「秘密のケンミンSHOW」を勇退し、芸能活動を続けている。