NHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」が10日、前半のヤマ場を迎え、本木雅弘(54)演じた斎藤道三が「長良川の戦い」で討ち死にした。本木の怪演ぶりは大河史上、記憶に残るはずだ。舞台となった岐阜市は「道三ロス」を前に、コロナ禍で観光客ロスとなっている。ドラマは引き続き、同市を舞台に光秀が新たに仕える織田信長(染谷将太=27)との関係が描かれる。今後の展開、コロナの終息とともに、観光客の回復はなるのか?

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放送終了後、ネットでは「道三ロス」に陥っている視聴者が多くみられる。その道三が攻略し、現在の基礎を作った岐阜市も同じ思いだ。大河では、1973年(昭48)の「国盗り物語」、92年の「信長」に次いで久々に注目された。

市では「明智光秀ゆかりの地」として、大河による観光客の誘致を目指した。岐阜城のある金華山のふもと、岐阜公園にある「岐阜市歴史博物館」2階を、今年1月11日から1年間、「麒麟がくる 岐阜 大河ドラマ館」として衣装や小道具を展示、道三の広間のセットを再現した。「麒麟効果」で、オープン10日目の1月20日に入場者は1万人、3月3日に5万人を突破した。県の18年観光入込客統計調査では、18年の歴史博物館の入場がのべ6万人だから、上々のスタートを切っていた。

しかし、その勢いはコロナで急停止。4月上旬、市内のナイトクラブでクラスター感染が発生した。13の特別警戒都道府県の1つとなり、ドラマ館のほか、年間のべ20万人以上が訪れる岐阜城など、施設は休館。毎年4月上旬に行われる「道三まつり」も中止となった。4月28日、JR岐阜駅北口の織田信長公像にマスクをつけたのが話題になった程度だ。

本来なら今日11日に始まり、10月半ばまで年間10万人以上の入り込みが予測される「長良川の鵜飼」も開始が見送られた。コロナ対策優先で、10月の「信長まつり」の開催も微妙だという。斎藤道三の菩提(ぼだい)寺「常在寺(じょうざいじ)」の北川英生(えいしょう)住職(79)も、「すべてはコロナが影響している」と残念がる。

この先、歴史通りドラマが進めば、道三の死から11年後の1567年、信長が美濃を攻略し、岐阜を拠点に「天下布武」へと乗り出す。美濃を追われた光秀は放浪の末、室町幕府15代将軍の足利義昭を連れて岐阜に舞い戻る。そして信長に仕え、飛躍していく。市内で薬局を営む40代男性は、「今は表を歩く人すらいない。安全宣言が出たら、多くの人に来てほしい」と期待する。

「その年の大河の舞台は、旅行商品の目玉」とも言われる。今も昔もJTBをはじめ、観光業界の定説は変わらない。5月5日、岐阜市と県はクラスターの終息宣言を出した。施設の再開を含め、今後の巻き返しに注目だ。【赤塚辰浩】

◇NHKの番組での最近のロス

「本木・道三」は、1月19日の放送開始翌週、第2話で義理の息子を「一服盛って」、茶で毒殺した。4月26日の放送では殺された2人の息子の血を顔に塗って叫ぶなど、強烈な印象を残した。NHKの番組での最近のロスとしては、15年度下半期の連続テレビ小説「あさが来た」の「五代ロス」(五代友厚役=ディーン・フジオカ)、17年大河「おんな城主直虎」の「政次ロス」(小野政次役=高橋一生)が話題となった。