新型コロナウイルスの感染が、再び拡大している。東京では、28日に266人の新規感染者が確認された。前日27日に確認された感染者は131人で、1日の新規感染者が1週間ぶりに200人台を下回ったが、また戻ってしまった。100人超えは20日連続だ。愛知県でも28日に109人と1日の新規感染者が初めて100人を超え、大阪府でも過去最多の155人の感染が確認された。

政府が5月14日に39県、同21日に京都、大阪、兵庫の2府1県、同25日には残る5都道県で緊急事態宣言を解除したのに伴い、イベントや対面取材の機会も戻ってきた。新作映画の公開初日及び公開記念舞台あいさつは、俳優陣が登壇するスクリーンと観客が鑑賞するスクリーンとをつないでリモートで行われ、メディアは俳優陣がいるスクリーンで取材する形が多くなった。入場時には検温が義務付けられ、左右1席空けてソーシャルディスタンスを守る配慮もされている。

一方で、全国で緊急事態宣言が解除されて2カ月が経過し、取材現場において危機感や配慮が鈍磨してきた気がする。例えば、入場時に手指のアルコール消毒を義務付ける旨、リリースには書いていて、確かに現場には消毒用アルコールのボトルも用意されている。ただ、緊急事態宣言解除からしばらくは入り口の正面に置いて、その場で消毒が義務付けられていたのが、ボトルが脇に押しやられている上、特に手指消毒への呼び掛けもないなど、イベント主催者側の現場での対応が緩くなっているケースがある。

取材するメディアの意識も、緩くなっていると感じる。受付で並ぶ際は、一定の距離を置いて並ぶようにしているが、中にはかなり近い距離に“肉薄”してくる人がいる。あきれたのは、ソーシャルディスタンスのため、意図的に空けていた前の記者との空間に、割り込んできた記者がいたことだ。そもそも、並んでいる列に割り込むこと自体、失礼な話だが、ソーシャルディスタンスへの配慮は感じられず、感染予防に対する感覚が不足しているとしか思えない。

PCR検査を受けた数などの違いもあり、一概に比較できないのも事実だが、緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出が出来なくなった当時より、今の東京は新規感染者が多い。緊急事態宣言発令3日前の4月4日に、東京で確認された新規感染者は118人。これが東京では初の1日100人超えだったが、多い日はその2倍を超える新規感染者が確認されているのが、東京の現状だ。

その中、連日、外で取材している。公共の交通機関に乗って、都内各地を回っている自分は、感染リスクが高いと自覚している。だから、駅で乗り降りする時、取材現場に入る際は、可能な限り手洗い、手指消毒を行うように徹底している。

自分が感染してしまうという不安、恐怖以上に、感染を拡大させる要因に自分がなってしまうのでは? という部分に恐怖を覚える。加えて、取材する場、機会が全てなくなってしまった、4月当時に戻りたくないという思いが強い。記者は現場に出て取材してナンボ…取材現場に行けない、そもそも行き先がないことは本当に悲しく、心が苦しい。

映画館が全国的に休業に追い込まれた映画業界関係者も、再び映画館が休業に追い込まれ、業界全体がストップしてしまうのではないか? との不安を口にし始めている。中には予定していたイベントを直前で取りやめた社もある。担当者の無念は想像に余りあるが、その無念を押しとどめて感染拡大のリスクを考慮した英断をたたえたい。

こんな状況下でも、今日も外でイベントなどを取材する立場から言いたい。今は、緩んでいる場合ではない。