松平健(66)の男の意地、時代劇を演じる俳優としてのプライドを見た思いだった。松平は7月29日に都内で行われた、フィットネスクラブを運営するRIZAP(ライザップ)グループの記者発表会で、シニア向けプログラム「ライザップ シニアプログラム」を受け、体力年齢20代に若返った肉体を披露した。

松平は3月まで4カ月間のプログラムを行い、体重17・1キロ、体脂肪7・6%をそぎ落とした一方、筋肉率は111%アップ。会見では、ステージ上で華麗に反復横跳びを披露。42回も跳び「(体が)すごく軽いですね。まだまだいけます」と胸を張った。短パンから、むき出しになったふくらはぎは、はじけそうに膨らんでいた。一方、腹部は締まり「筋肉がドンドンついてきた感じ。おなかのボタンがはじけていたのが締められる。逆三角形の理想の体」と胸を張った。

松平は舞台や映画、ドラマなど多数の作品に出演してきたが「50歳過ぎくらいに一段落したら、衰えてきた実感があった」という。特に50代後半から体力の衰えを感じ始め、還暦を迎えた段階で「劇的に体重が増え、おなかが出てきた」という。40~50分、ウオーキングしていたが、坂道や階段の上り下りで息切れも出始め、舞台での立ち回りや、殺陣、乗馬などの際にも「仕事に影響が出た」と感じるようになった。「時代劇なので立ち回りが肝心。これは変えなければいけないと思ったのがきっかけ」でライザップに挑戦した。

過去、松平を何度か取材し、実際に立ち回りを見たこともある。2011年(平23)6月に行われた映画「劇場版仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル」製作発表会見に、松平は「暴れん坊将軍」の徳川吉宗の姿で現れ、大立ち回りを演じた。敵キャラをバッタバッタと切りまくる姿は、カメラのシャッターを切ってもブレてしまうほど激しく、かつ速く、驚いた。当時、松平は57歳。衰えを感じ始めて久しかったとは、思ってもみなかった。

ただ、4年半後の16年1月に都内で行われた、時代劇専門チャンネルの「池波正太郎時代劇スペシャル 顔」(6月放送)と映画「ジョーのあした-辰吉丈一郎との20年-」共同記者会見で、辰吉丈一郎と初対面した際は、記者席からも足取りが重く見えた。着物の帯の上に、やや肉も出ていた。松平は当時、62歳。振り返ってみても「劇的におなかが出てきた」時期だったのは間違いないだろう。

放送中の新CMでは、上るのもきつかった石段を1段飛ばしで駆け上がった。ただ、その裏には妥協のない取り組みがある。「-シニアプログラム」終了後に新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出自粛を余儀なくされたが「家庭でも出来る運動を教わって週2、3回はやっていた」。限られた環境下で出来る努力を継続し、体形を維持していた。

今後、年齢を重ねていく中で、動くことが出来る体でいられるために、何が必要かを松平から教わった思いだ。【村上幸将】