上田慎一郎監督(36)が“監督絶対主義”を掲げる新しい映画実験レーベル「Cinema Lab(シネマラボ)」で新作「ポプラン」を製作し、主人公の田上達也役を皆川暢二(32)が演じることが14日、分かった。

上田監督は、製作費300万円のインディーズ映画ながら興行収入31億円超と日本映画史に残るヒットを記録した18年「カメラを止めるな!」(カメ止め)で知られる。同年6月に都内2館で封切り後、新人監督だった上田監督と当時、無名だった俳優陣が連日、舞台あいさつを続け、作り手と観客がSNSによる口コミで映画を広げ、全国375館にまで拡大公開される一大ムーブメントを巻き起こした。

皆川は「カメ止め」と同じ300万円で製作されながら、18年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で監督賞を受賞するなど日本インディーズ映画界を席巻し“第2のカメ止め”と評された映画「メランコリック」(田中征爾監督)を、主演兼プロデューサーとして製作した。「カメ止め」が17年に観客賞2位に選ばれたウディネファーイースト映画祭(イタリア)で、翌18年には「メランコリック」は新人監督作品賞に選出と共通項もある。ともにインディーズ映画の世界から日本映画界に強烈なインパクトを与えた、日本映画の未来を背負う上田監督と皆川が初のタッグを組む作品が「ポプラン」だ。

上田監督は「本作は9年前に着想を得てから、ずっと温めてきたものです。自分の企画ストックの中でも一番の問題作で、今までなかなか実現に至りませんでした。内容が発表されたら『何じゃそりゃ!?』と驚かれると思います」と企画立ち上げの経緯を説明。その上で「主演の皆川暢二さんとガッツリ肩を組んで、日々、ともに悩み、迷い、もがきながら『まだどこにもないエンターテインメント』を追いかけてジタバタしています」と皆川とのタッグへの期待感をにじませた。

皆川は、上田監督について「今回関わらせていただく以前は作品、SNS上を通してでしか存じあげなかったのですが、そこから上田監督の考えと行動に対して勝手にシンパシーを感じていました。そんな上田監督とご一緒にできることは非常にワクワクしています!」と、以前から感じるものがある存在だったと語った。その上で「主演としてベストな作品にできるように貢献することはもちろんなのですが、上田監督、キャスト、スタッフの皆さんと一緒に作りあげるという過程も大事にしたいと思います。全力でこの作品に向き合いたいと思います」と一俳優としてだけでなく、持ち合わせるプロデューサー的な視点で全体を見渡し、作品に関わっていく考えを示した。

シネマラボは、4月にNHKで放送され、話題を呼んだドラマ「いいね! 光源氏くん」のメイン演出を担当した小中和哉監督が、「踊る大捜査線」シリーズで知られる本広克行監督に声をかけ、同監督が尊敬する押井守監督を交えて17年に集まり、発起人として立ち上げた。大手映画会社とは一線を画した芸術的、実験的な作品を生み出し、60年代から80年代を中心に一時代を築いたATG(日本アート・シアター・ギルド)に着想を得た。映画化の条件は「限られた製作予算」以外、企画開発、脚本、演出などは全て監督の自由。レーベル第1弾として、小川紗良が主演する本広監督の「ビューティフル ドリーマー」が11月6日から全国で順次、公開される。

上田監督は「そうそうたる巨匠たちの中に交ぜていただき、参加できることを光栄に思います。問題作にGOを出してくれたシネマラボの皆さんの勇気と寛容に感謝しています」と企画を通してくれたことに感謝した。皆川も「クリエーター第一主義という理念を掲げて設立されたシネマラボには、純粋にすごいと思いました。そしてそんなシネマラボの中で、『ポプラン』という作品はシネマラボの理念を象徴するような作品になるのではないのかと感じています」と自信を見せた。

今回は「ポプラン」というタイトルと主演が皆川であること以外、一切が謎に包まれている。上田監督は「『ポプラン』とは一体、何なのか? 妄想を膨らませてお待ち下さい!」とコメントした。