先日、タレントの押切もえさん(40)を取材させてもらった。場所は東京都世田谷区内。同区内にはスタジオはたくさんあるが、今回のインタビュー場所は、東急世田谷線の松陰神社前から徒歩6分にある場所だった。

徒歩6分というと不動産広告のような表記だが、取材場所はマンション建設現場だった。押切さんは、12年からマンションプロデュースの仕事を請け負っており、8棟目となるマンションがほぼ完成するということで、視察に同行させてもらったのだ。

押切さんといえば、蛯原友里とともに、「エビモエ」としてCanCamの専属モデルとして一世を風靡(ふうび)したことで知られる。モデルという職業柄、洋服やウエディングドレスなどのデザインやプロデュースなどに関わることになり、その後、温泉旅館などのアドバイザー、プロデュースをすることになり、今回のマンションシリーズに携わることになったという。モデルとファッションという親和性が高い仕事を続けていくうちに、さらに仕事先が広がったようだ。

有名人の知名度が商品のPRにつながることは言うまでもないが、有名というだけでは事業は継続しないことは、タレントショップの衰退をみれば明らかだ。継続して仕事の依頼があるということは、企業としてもメリットを感じ、つまり、ビジネスとしてつながっているから、押切さんのプロデュースマンションも8棟目を数えることになった。マンション名には「#mo」という押切さんの名前もついており、それがブランド化しているともいえそうだ。

話はがらっと変わるが、長年、日本の芸能界を取材していて、一番感じることは、最近は芸能人の数が増えたということだ。テレビやラジオ、映画、舞台といった従来の限られたステージしかなかったのが、ネットの普及により、YouTubeや配信事業など、より活躍の場が増えたからだと思う。でも、その分、芸能人同士の仕事の取り合いは、より激しくなった。コロナ禍によって、芸能界自体の仕事量も減り、今年の芸能人の相対的な年収はかなり下がっているのではと思う。

最近では、ワイドショーなどのコメンテーターも芸能人が務めることが多くなった。芸人やタレントが情報番組のMCを務めることも珍しくなくなった。ユーチューバーらが、タレントとしてテレビに出るようにもなった。そういう芸能界の現状の中では、押切さんの仕事は、現代の状況にかなっているのだと思う。

今や、歌や芝居、お笑いなど芸を披露することだけが仕事でもない。これから羽ばたこうとする芸能人の方々には、とりあえず、ウイングを広げてみる努力をしてみませんかと提案したいと思っている。