天真らんまんに話す姿に充実感がにじむ。現在放送中のNHKの連続テレビ小説「おちょやん」(月~土曜午前8時)で、ヒロインの竹井千代を演じる女優杉咲花(23)が第3週(14日)から登場した。「笑ってもらうのはめちゃくちゃ難しいし、怖い」。このほど日刊スポーツなどの取材の応じ、意気込みを語った。

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初めての大阪弁、莫大(ばくだい)なせりふ、1日のリハーサルの量も多い。「大阪弁をしゃべることがすごく楽しい。この作品自体が自分にとってモチベーションになっています」。杉咲はどんなときも前向きだ。

ヒロインは、奉公先の大阪・道頓堀で芝居に魅了され、喜劇女優となり、「大阪のお母さん」と呼ばれるまでの人気者になった浪花千栄子がモデル。上方の大女優という役柄にも気負いはない。

「一番大事にしなければいけないのは、役としてちゃんと立つこと。それだけを考えています」。ドラマでは星田英利らお笑い芸人らが脇を固める。「笑ってもらうのはめちゃくちゃ難しいし、怖い。気付くと手足が震えている。喜劇に対する尊敬の念が高まっています」。真剣なまなざしには、あどけなさと力強さが同居する。

浪花の自伝「水のように」を読んだ。「丁寧に毎日を過ごすことを大切にされていた。苦しい体験やつらい思いをたくさんされている。でも、それに負けないぐらい、生きるパワーや諦めない気持ちが強い方」。脚本は社会現象にもなったTBS系ドラマ「半沢直樹」を手掛けた八津弘幸氏。苦難の連続の後にどんな“倍返し”があるのか、展開にも注目だ。

撮影の合間に大阪・ミナミの道頓堀に食事に行くこともある。「道頓堀の活気が、そこにいる人たちを強くしていく。そこにいるだけで、自分のレベルが5個ぐらい上がった気がする」。新型コロナウイルスの影響で、撮影は2カ月以上中断を余儀なくされた。「笑いと悲しみは紙一重というせりふが劇中に出てくる。まさにそうで、楽しい場面で涙が出たり、悲しい場面がいとおしく思えたりする。こんな時期でみんな苦しいことがいっぱいあるはず。この作品で『あとちょっと頑張ろう』と考えてもらえるんじゃないかと思います」。コロナ禍で沈む日本に、元気と勇気を届ける。【松浦隆司】

◆杉咲花(すぎさき・はな)1997年(平9)10月2日、東京都出身。11年にオーディションで芸能界入り。16年映画「湯を沸かすほどの熱い愛」で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞。同年にNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」に出演。NHK大河ドラマ「いだてん」など出演多数。特技の書道は準6段。153センチ。血液型B。

◆「おちょやん」 松竹新喜劇の創設メンバーとして活躍した上方女優、浪花千栄子の半生をモデルに、主人公の笑って泣ける波瀾(はらん)万丈の生きざまを描く。明治の末に生まれ、大阪・道頓堀の芝居茶屋に奉公に出された主人公は、芝居の道を志し、喜劇女優の階段を駆け上がる。一時は芝居の世界から姿を消したがラジオドラマで復活。「大阪のお母さん」と呼ばれるほどの人気を得る。