東日本大震災から10年となる今年、震災で大切な人を亡くした人の“心の復興”を描く映画「漂流ポスト」(3月5日公開、清水健斗監督)が、バルセロナ国際映画祭で審査員賞を受賞した。

「漂流ポスト」とは、「手紙を書くことで心に閉じ込められた悲しみが少しでも和らぎ、新たな一歩を踏み出す助けになるなら」という思いから、被災地である岩手県陸前高田市の山奥に建てられた郵便ポストのこと。

11年3月12日に岩手を訪れる予定だった清水監督は、自分が1週間前に訪れた場所が津波に流されてしまう様子をニュースで見て、人ごととは思えず、長期ボランティアに参加した。そこでじかに見聞きした被災者の思いを風化させないために、ニュースで知った「漂流ポスト」を舞台に、同映画を製作した。

受賞をうけ、清水監督は「まずは一人のクリエーターとして、世界の素晴らしい作品と肩を並べて上映してもらえた事、結果として賞をいただけた事は非常に光栄です。それ以上に、東日本大震災から10年の年に、国内だけでなく海外にもメッセージを発信できる機会を与えてもらい非常にうれしく思います」。

その上で「3年前に初めて海外で上映された本作は、今回で18回目の海外上映になりました。その間、世界でもさまざまな出来事が起き、心に傷を負った方々が多くいらっしゃいます。生きていることのありがたさ、命や日常のはかなさ、人との絆の温かさ、不条理な出来事にどう向き合い立ち上がるか……。私たちが東日本大震災で学んだ教訓が、世界でも問われている。そして、今だからこそ伝わるメッセージがあるのだと改めて考えさせられました」。

続けて「日本だけでなく世界の人々に少しでもいいから勇気を与えられる。そんな作品に本作がなれるように、今後も発信を続けていけたらと思っています」とコメントした。