味方良介(28)は今年注目の若手俳優だ。このほど日刊スポーツのインタビューに応じた。14日に主演舞台「熱海殺人事件 ラストレジェンド ~旋律のダブルスタンバイ~」(東京・紀伊国屋ホール)が初日を迎える。コロナ禍での上演だが、培ってきた胆力で観客に「生きる力」を届ける。

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「熱海-」で主人公の刑事、木村伝兵衛を演じるのは2年ぶり4回目だ。「なかなかハードですけど、愛が詰まっていて、怒りや優しさもあって、魅力的な人たちのうごめきが2時間に凝縮されている作品です」。紀伊国屋ホールが今春の改装工事に入る前、最後の演目となる。「たくさんお世話になった劇場なので、気持ちが入ります。やるしかないでしょ、っていう感じです」と意気込んだ。

「熱海-」は、劇作家つかこうへいさんの代表作。膨大な量のせりふを猛スピードで発し続ける、体力的にも厳しい舞台だ。過去の公演でも、気迫あふれる圧倒的な存在感を発揮してきたが、「最初(17年)は全然でした。ただのスピード勝負で、せりふを言って、走って逃げていくような…」と回想した。「でも、だからこそ分かったこともありました。2回目、3回目と、立ち位置も変わっていきました」と明かした。

11年に俳優デビュー。多数の舞台やミュージカル出演を経て、昨年1月のフジテレビ系「教場」でドラマ初出演を果たした。「最初は本当に右も左も分からなかった。今まで自分が舞台でやっていたことを全部ぶつけて、映像の見せ方とか、伝え方とかを知っていきました」と振り返った。

「教場」では主演の木村拓哉(48)から声を掛けられた。「最後のシーンを撮り終わった後に、肩をぽんとたたかれて、『今日帰った後、お前、レモンサワーうまいだろうな』って言ってくれたんです」と明かした。「何か伝わったんだなと思えて、すごくうれしかった。『お疲れさん』でも『よかったよ』でもないけど、木村さんなりの愛情だったんだと思います」と感謝した。

歌舞伎役者市川海老蔵(43)主演のフジテレビ系スペシャルドラマ「桶狭間 OKEHAZAMA~織田信長~(仮)」(放送日未定)など、今後も複数のドラマ出演を控える。「もっと『味方』という人間を知っていただいた上で、舞台にも足を運んでいただきたい。舞台はやっぱり僕にとって一番大事なところなので」と言葉に力を込めた。

昨年から今年にかけて、演劇界はコロナ禍によって大打撃を受けた1年だった。「熱海-」も感染対策を徹底した上での上演となるが、スタンスは明確だ。「この時期にやれる環境があるだけで、すごくぜいたくなこと。やるって選択をしてくれる人がいるなら、僕らは僕らで、変わらず全力で、感謝して、やるのみです」ときっぱり。

「演劇には、それを超えるだけの力があると思います。混沌(こんとん)とした時代でも『熱海』を見て、もっと『生きよう』って思ってもらいたい。『この1年苦しかったけど、すごく元気もらった! 明日からもう1回頑張ろう』って思ってもらいたいです」

舞台への感謝と愛は、見る者を圧倒する演技で表現する。「1つでも多くの作品に携わりたいです。死なない程度に、死ぬ気で」。強い生命力が宿る、鋭い眼光。飛躍の1年が始まった。【横山慧】

 

◆味方良介(みかた・りょうすけ)1992年(平4)10月25日、東京都生まれ。2・5次元ミュージカルや「テイクミーアウト」「飛龍伝2020」など多数の舞台に出演。昨年テレビ朝日系「妖怪シェアハウス」に出演。趣味は舞台鑑賞。176センチ。血液型A。

◆熱海殺人事件 73年に初演で、紀伊国屋ホールを拠点に再演を続けてさまざまなバージョンで上演。86年には仲代達矢主演で映画化された。今年は味方と荒井敦史のダブルキャスト主演。乃木坂46新内眞衣やNON STYLE石田明らも出演する。演出は岡村俊一氏。