シンガー・ソングライター山下達郎(68)が25日、都内で行われた日本映画専門チャンネルの番組「日曜邦画劇場」放送開始20周年・1000回記念特別上映会として7月4日午後9時から放送される、1937年(昭12)の映画「人情紙風船」(山中貞雄監督)4Kデジタル修復版の番組収録に参加した。

山下は、TOKYO FMで「山下達郎のサンデーソングブック」を1992年(平4)10月から28年、放送するなどラジオ番組には出演しているが、自らのイメージの拡散を嫌い、テレビへの出演はしないスタンスを貫き、必要な場合のみ取材に応じ音声のみが番組で流されてきた。

今回も音声での出演となるが、日本映画を愛し、造詣も深い山下が「人生の1本」と公言する「人情紙風船」が、最高画質の4Kデジタル修復版(放送は2Kダウンコンバート)がテレビで初放送されることを受け、スペシャルゲストとして出演を快諾。関係者によると、テレビ番組への音声出演はベスト盤「OPUS~ALL TIME BEST1975-2012~」をリリースした12年以来だといい、極めて異例だ。

山下は濃紺のシャツと帽子をかぶり、「人情紙風船」公開前の1937年(昭12)8月21日号の「キネマ旬報」などの資料を持参して登場。司会のフジテレビ軽部真一アナウンサー(58)に「01年に出会い20年。映画の番組は初めてですね」と語りかけられると「映画のプログラムにお呼ばれするのは生まれて初めて」と笑みを浮かべた。音声ながらテレビへの出演を決めた理由を聞かれると「軽部さんの20周年のお祝いで…役不足ですが。『人情紙風船』ということで、来なければいけないなと」と答えた。

山下は、80年代にレンタルビデオ店で「人情紙風船」と出会ったという。「何げなく借りて見たのが30代で見たカルチャーショック。それから数年間、戦前の映画に没入した。何十回見たか、分からない…見る度にベスト1だなと。全く飽きない。僕にとっては大事な1本。最初から、全てのシーンが美しいんですよ。筆舌に尽くし難い」と絶賛した。

4K修復版の印象を聞かれると「(映像にかかっていた)幕が取れた。ほぼニュープリントに近いと解釈してもいい。当時、ご覧になった方が、こういう感覚で見たんだなと…。日本の映画は状態が悪い。半ば失望というか…見てましたけど。これは素晴らしい。良い時代になりました。1本でも多く大戦前の映画を見たい」と喜んだ。