新型コロナウイルスによる合併症で20年10月4日にパリ近郊の病院で亡くなった、日本を代表するファッションデザイナー高田賢三さん(享年81)を亡くなるまで追いかけた、世界初のドキュメンタリー映画「# KENZO TAKADA」(中山章太郎監督)が21年に完成、公開予定だと21日、配給のライトフィルムが発表した。

「# KENZO TAKADA」は、18年から2年以上にわたり高田さんの撮影を継続してきたが、撮影中に亡くなったという。ライトフィルムは「私たちは2018年から二年以上に渡り、賢三氏を撮影してきたため、この映画を作ることができました。賢三氏がこの映画の最後に残したものは、80歳になった彼自身を描いた自画像です。描きかけとなった自画像は、ある意味で賢三氏が未来をどう思い描いていたのかを示しています。この映画は賢三氏が80歳になった自分と向き合うための自画像制作に密着しつつ、ファッションや彼のライフスタイルを通して、世界中に「自由」と「色彩」と「文化の多様性」を与えた、半世紀以上に渡るクリエイションと葛藤を振り返る長編ドキュメンタリーです。そして歴史上の偉人でもある賢三氏の、最期の二年間を記録したドキュメンタリーフィルムでもあります」と紹介した。

また、中山章太郎監督のコメントも公開した。

「この映画の撮影を始める二年前(2017年)、とあるTVドキュメンタリー番組の制作の中で、私はパリ在住の高田賢三さんを取材することになりました。二、三週間くらい事務所のデスクで取材のための下調べをするうち、私の中で賢三さんのドキュメンタリーを撮りたいという考えが、ふつふつと湧いてきました。海を渡っての挑戦、成功と挫折、恋と別れ、「この人の人生は映画になる」と思える方と実際に出会える機会はめったにありません。そして賢三さんについてのドキュメンタリー映画は、まだありませんでした。私自身、これから自分はどう生きていくのだろうと悩んでいた時期でもあり、もしかしてこの映画を作れば、その答えも分かるのではないかという希望も合わさり、思い切ってプロデューサーに、賢三さんのドキュメンタリー映画を撮りたいと相談したのが始まりでした」

「来日していた賢三さんに撮影を申し出たのは、皇居のそばにある高級ホテルのレストランでした。その時の私はあまりに緊張していたので、何を話したかあまり記憶がありません。ただ印象に残っているのは、落ち着いた優しい賢三さんの話し声と、『自分なんかが映画になるかな?』と不安そうにしていたことです。映画制作を進める中、多くの賢三さんの友人にお会いしました。その誰もが賢三さんのことを、本当に大切に思っているのが伝わってきました。周りにいる人たちは、常に賢三さんに心を配り、気にかけていました。放っておけないと思わせる、そういう魅力が賢三さんにあるのだと思います」

「賢三さん自身は、自分のやりたいこと、すべきことが、いつも明確に分かっている人でした。80歳になっても毎日仕事をしたり、絵を描いたり、ピアノを練習したり、ジムで運動したり、忙しく何かに取り組んでいました。また多くの人が言うように、どんな時も楽しむこと、喜びを感じることを大切にしていました。取材が終わるといつもシャンパンを出してくれて、色んなお話をしてくれたり、体調がすぐれない時や忙しい時も、取材に多くの時間を割いてくれました。また寒い日に外を歩いてくれたり、人を紹介してくれたり、パーティーを開いてくれたり、私の多くのリクエストに応えてくれました。本当に、本当に、感謝しています」(コメントは原文のまま)

高田さん以外の出演者は後日、発表する。