女優小川紗良(25)が、12年ぶりに復活する伝説の小劇場、東京・新宿シアタートップスのこけら落とし公演「演劇の街をつくった男」(8月25~29日)で、舞台初主演を飾ることが21日、分かった。

多くの演劇人が羽ばたいた同劇場は、09年に惜しまれつつも閉館。「新宿シアタートップス」として再開するニュースは演劇ファンを喜ばせた。劇場の新たな節目に主演として立ち会うことになり、小川は「舞台をやる人への憧れがあった。役者としても1つ厚みが増えると思うし、積み重なるものがきっとあると思う。このチャンスがいただけてうれしいです」と意気込む。女優のかたわら映画監督としても活動。映像作品が活動のベースで、舞台出演は5年ぶりだが「舞台は圧倒的に生もの。日や回によって全然違うものになると思うので、それを体感するのも楽しみです」と心躍らせる。

下北沢で演劇を始めた若者がタイムスリップし、「演劇の街の始まり」に出会う物語。同地に演劇文化を根付かせた本多劇場グループ代表・本多一夫氏の足跡をまとめた書籍が原作で、ドラマ「私の家政夫ナギサさん」「おっさんずラブ」などの徳尾浩司氏が脚本・演出を手掛ける。同氏が主宰する劇団「とくお組」は閉館直前のトップスで公演を行い、同劇場への思い入れは深い。こけら落とし公演について徳尾氏は「光栄です。演劇人としてなかなか出来ないこと」と感謝。小川に対しては「作り手、役者どっちの視点も持っている。一緒に作品を作っていく過程が楽しみ」と期待した。

小川は演劇が盛んな早大出身で、学生時代から小劇場に足を運んだ。保育園や小学校の学芸会でヒロインを演じたことが演劇の原体験といい、「生の反応が返ってくる楽しさは小さい時から感じていた」。昨年の緊急事態宣言下では多くの劇団が公演中止を余儀なくされ、外出自粛期間開けに見た作品ではステージに立つ役者を見ただけで感動したという。「舞台は不思議な引力がある場所だと改めて体感した。この機会もたくさんの人にとってそういうものになれば」と話している。【遠藤尚子】

◆小川紗良(おがわ・さら)1996年(平8)6月8日、東京都生まれ。19年早大卒。ドラマは同年NHK連続テレビ小説「まんぷく」などに出演。20年映画「ビューティフルドリーマー」に主演。初長編監督作「海辺の金魚」が公開中。159センチ、血液型B。

◆新宿シアタートップス 1985年(昭60)開業の小劇場。三谷幸喜氏の東京サンシャインボーイズや松尾スズキの大人計画など人気劇団が公演を行った。09年に閉館後は松竹芸能が「新宿角座」として営業したが、8月から下北沢に8つの劇場を持つ本多劇場グループが運営を引き継ぎ、「新宿シアタートップス」の名称で再開する。