歌手で俳優の中村雅俊(70)が、デビュー48年目で初めてフルオーケストラと共演する全国4都市ツアー「ビルボードクラシックス 中村雅俊 Symphonic Live 2021」に挑む。8月28日の兵庫・西宮からスタートし、名古屋、熊本、東京で「ふれあい」「俺たちの旅」「恋人も濡れる街角」などのヒット曲を壮大な演奏をバックに熱唱する。新たな挑戦への意気込み、今後について聞いてみた。

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宮城県女川町出身。石巻高を卒業して、慶大に入学。東京で俳優になった。生まれ育った故郷が大きな被害にあった3・11の東日本大震災から10年たった。

「スピードは分からないけど、復興は確実に進んでいると思います。インフラも整備されてきていますよね。ただ、あまりに大きな悲劇でしたから、震災直後に訪れた際には悲しい話ばかりでした。その爪痕はずっと残っていると思うんですよね。家を新築したりマンションに引っ越したりされていますが、ことあるごとに故人のことを思いだされているんです。心が癒えるまでには、まだまだ時間がかかるんじゃないかと思います」

震災から1カ月後に故郷に戻った。生まれ育った家は瓦礫(がれき)になっていた。親戚3人が亡くなった。「女川の町は俺たちが守る」との垂れ幕を届けた。

「震災以降、支援活動として頻繁に歌を歌いに行っていました。歌の力はやっぱりあるなと感じながら、歌わせてもらいました。そういう意味では、歌を歌うってことを、俺自身はこれからもずっと続けて行かなくてはいけない、と思っているんです」

人生100年時代になった。その半分の50年近く年スターをやっている。

「デビューして間もない頃は、冗談で『歌う青春スター』なんて言ってたんですけどね(笑い)。もうそのフレーズは言えないですけど、歌うことはこれからも、どんな形でも続けていきたいと思っています。ただ、100歳までは俺、生きないと思うので(笑い)。自分の中ではここ10年でしょうかね、10年はガッツリとやれたらいいなと。10年やったら、もう80ですからね!」

今の目標はアメリカでの映画出演。

「実は昨年、アメリカで制作される作品への出演が決まっていたんです。3月にニューヨークに行って撮影の予定だったんですが、その頃ニューヨークは新型コロナウイルスが猛威を振るっている時期でね。結局、中止となってしまいました」

やりたいことが、まだまだある。夢は、続いている。    【小谷野俊哉】

(終わり)

◆中村雅俊(なかむら・まさとし)1951年(昭26)2月1日、宮城県女川町生まれ。73年慶大在学中文学座付属演劇研究所入所。74年4月の日テレの連ドラ「われら青春!」で主演に抜てきされデビュー。同7月に挿入歌「ふれあい」で歌手デビュー、120万枚超の大ヒット。75年同局「俺たちの勲章」「俺たちの旅」、映画「ふれあい」。歌手としてシングル55枚、アルバム41枚をリ

リース。182センチ。血液型O。

◆「billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2021~Before DAWN~」◆

▼8月28日午後5時 西宮・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 大阪交響楽団▼9月3日午後6時30分 名古屋・愛知県芸術劇場コンサートホール 大阪交響楽団▼9月26日午後5時 熊本・熊本城ホールメインホール 九州交響楽団▼9月30日午後6時30分 東京・Bunkamuraオーチャードホール 新日本フィルハーモニー交響楽団。いずれも指揮は円光寺雅彦、サポートミュージシャンは大塚修司。