コロナ禍と東京2020で、今年はついに1度も海に行かないまま夏が終わってしまった。8月の生まれだけに「夏といったら、やっぱ海」という感じで生きてきたので、残念でならない。

海どころか、この1年半はお酒を飲み出ることもままならない。1人暮らしなので、休みの日をのぞいて夜は食事も兼ねて飲みに出ていた。今は緊急事態宣言下で、仕事で午後8時までに飯が食べられないとなると一大事だ。

酒を飲みに出られないので、他に大した趣味もないのでお金の使いようがない。これも体を大事にしてつつましく生きよという、神様か仏様のおぼしめしなのだろうと思っていた。

だが、8月29日付の日刊スポーツ芸能面のインタビュー「日曜日のヒロイン」で取材した、女優の柴田理恵さん(62)からありがたいお言葉をいただいた。柴田さんが所属する劇団ワハハ本舗では、昨年5月の予定だった公演「王と花魁」が中止になっていたのだが、この10月に上演する。

舞台のことや劇団のことを、あれこれ聞かせてもらったのだが、最後にお酒、とくに劇団にとって重要な打ち上げができないことについて聞いてみた。すると次のような答えが返ってきた。

「若い子たちは遊んでバカやって、プラスになることたくさんある。夜中までずっとけんかするように話して仲良くなったりとか。失敗して反省したりとか。みんな真面目に仕事するからこそ、夜中まで飲んだりしたんですから。私たちは夜中まで飲んだりしたことっていうのは、絶対にプラスになってると思うんです。酔っぱらってけんかして、どうやって謝ろうかと。本当に腹を割って話しあってね。今はSNSで本音で、面と向かっては建前だけ」

特に心に響いたのは「酔っぱらってけんかして、どうやって謝ろうかと」というところだ。今までの人生のけんか相手が走馬灯のように思い浮かんで、まるで自分がもうすぐ死んでしまうのではないかと思えてきた。

9月になった途端に夜は虫が鳴き出し、一気に涼しくなった。そろそろ熱燗が恋しくなる季節だ。いつかまた、徹夜で飲み明かしたり、ホテルのスイートルームを借り切ってパジャマパーティーができる日が来ることを夢見て、一人酒で自粛の日々を過ごそうと思っている。