イトウハルヒ(25)が6日、東京・新宿テアトルで開催中の「田辺・弁慶映画祭 セレクション2021」で上映された主演映画「春にして頬を拭う」(三浦克巳監督督)の舞台あいさつで、同作で初めて演技をした大崎翔洋(23)の、共演者である自身と作品への、力強く真っすぐ向き合い方を「初演技とは全く思えない」とたたえた。

イトウは劇中で志帆、大崎は海斗を演じた。同居している2人は特殊詐欺の受け子をしているが、ある日、詐欺グループのリーダー篠崎から危険な案件を持ちかけられ、犯行中に警察の追跡に遭い、海斗が捜査員を殺傷してしまう。その日を境に、運命が狂い出す2人を、情事を含め生々しく演じた。

イトウは2人の役どころについて「親がなくて施設で家族のように育ったという、監督の考えた生い立ちがあった。それをベースに(大崎と)2人でエピソードを考えた。ずっと2人で生きてきた感じを映像に出したくて長時間、一緒にいるようにした」と振り返った。

警察を殺傷した2人のラストは、悲しみと愛情が入り交じる、複雑な感情があふれ出すようなシーンとなった。撮影は日程の最後に行ったが、イトウは「私が気持ちが入らなくて何回も撮り直した。それなのに、翔洋が本気でぶつかってきてくれて出来たシーン」と振り返った。そして「どんな、ささいなシーンでも、真っすぐ見てくれるからこそ、私がやりやすかった。すごい自然体で尊敬しました」と大崎をたたえた。

一方、大崎は「全部、難しかったけれど最後…どういった進行でやれば良いかと考えた」と振り返った。イトウとの役作りについては「互いに相談し合った。普通のカップルじゃないので雰囲気をどう出そうか話し合った」と振り返った。

「田辺・弁慶映画祭」は、和歌山県田辺市で2007年(平19)にスタートした、新人監督の登竜門として知られる映画祭で、これまで沖田修一監督(08年、市民審査員賞)瀬田なつき監督(09年、東京国際映画祭チェアマン特別奨励賞)今泉力哉監督(10年、市民審査員賞)岨手由貴子監督(10年、東京国際映画祭チェアマン特別奨励賞)らを輩出している。

「田辺・弁慶映画祭 セレクション2021」は、同映画祭で受賞を果たした若手新人監督にスポットを当てた上映会として行われている。三浦監督は同映画祭で3、5日に上映された「親鳥よ、静かに泣け」が同映画祭でTBSラジオ賞を受賞した。その結果を受けて、今年5月に「春にして頬を拭う」を新作として撮影、製作した。「親鳥よ、静かに泣け」から約3年後にに撮影した「春にして頬を拭う」について「技術的なものは上がっている。『親鳥』は、せりふの応酬。今回はそいで見せていこうと」と語った。