志尊淳(26)が16日、東京・神楽座で行われたドキュメンタリー映画「人と仕事」(森ガキ侑大監督、10月8日公開)完成報告会で、コロナ禍の中、東京・渋谷の街でゲリラ取材まで敢行した撮影を振り返った。

「人と仕事」は、森ガキ監督が20年春にカリスマ保育士として知られる、てぃ先生をモデルとした映画「保育士T」を、志尊淳(26)と有村架純(28)を起用して製作予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて同4月7日に最初の緊急事態宣言が発出され、保育園から撮影許可が得られず、撮影の1カ月前に企画が頓挫。その2週間後、映画「新聞記者」などの製作で知られる、スターサンズの河村光庸エグゼクティブプロデューサから「ドキュメンタリーにした方が面白くないか」と提案され、全く新しい企画として始動した。

映画は夜の渋谷から始まり、マスクを着けた志尊がカメラを持った森ガキ監督と街を歩き回り、通行人に声をかけるが、なかなか捕まらず、戸惑う姿が映し出される。若い看護学校生と友人の男性を見つけ、声をかけると、看護学生は志尊本人だと知って驚いた後、話はコロナ禍の学業と医療現場について語り出す。

志尊は撮影当時を振り返り「森ガキさんと、渋谷でゲリラでいこうと思いついて、行ったら10人くらい無視された。見向きもしてくれなくて『何ですか?』みたいに見られた」と、ゲリラ取材が想像以上に難航したと語った。その上で「(取材は)緊急事態宣言中ではなかったですけど(断られすぎて)『メンタル、ダメです』って言いました」と苦笑した。

普段は俳優として取材を受ける立場だが、今作では保育士、農家などエッセンシャルワーカーと呼ばれる職業に従事する人々に話を聞く、取材者に挑戦した。志尊は「インタビューしていただいている時は、人と人との会話、呼吸、テンポ感…さまざまな人がいる」と、自らが取材を受けた際の取材者の印象を語った。その上で「自分がうれしいことをしたいと思った。興味を持ったり、作品を知ってもらうと、うれしい。職業を調べることを、出来る限りするようにしましたけど…」と、事前に取材対象の仕事の予習を行ったと明かした。

取材の中で、感じるものも多かったという。志尊は「僕が表面的に思っていた苦悩より、はるかにそれぞれの環境で苦悩を抱いていた。どの職業というより、1人1人、感じていたことが多く知ることが出来て良かった。『正解がなく、どうしたら良いんですか』と毎回、言っていた。インタビューを受けて良かったなと言ってもらえるように頑張った」と振り返った。その上で「いつもインタビューしてくださっているのは感謝。お話を聞かせて頂く上で(事前の準備は)しなければいけないことだと感じた」と自身を取材する記者、取材者に感謝した。

保育園では取材するだけでなく、有村とともに園児の着替えやおむつ替えを手伝った。志尊は「10代は、保父さんになるのが夢だった。(保育園を取材し)楽しかったし(保育士が)毎日やれているのはすごいと思った。実際、やってみての悩みを聞いた」と取材して、改めて保育士のすごさを感じたと語った。園児と一緒に遊んだりもしたが「逆に僕が遊んでもらった感じ」と苦笑した。