歌舞伎俳優中村勘九郎(39)、中村七之助(38)が24日、出演する「赤坂大歌舞伎」(11月11日初日、赤坂ACTシアター)の制作発表会見をオンラインで行った。

父、中村勘三郎の遺志を継ぎ、赤坂で開催している人気シリーズ。昨年は新型コロナの感染拡大で中止となっていた。勘九郎は「脚本もスタッフもすべてそろって、あとは稽古するだけだったのでとても残念だった。去年の悔しい思いを今年にかける思いです」と意気込みを語った。

3本立てとなる今回は、落語家笑福亭鶴瓶の新作落語を歌舞伎化した「廓噺(さとのうわさ)山名屋浦里」が大きな見どころのひとつ。16年に歌舞伎座で初演され、歌舞伎の伝統にないカーテンコールが巻き起こって話題となった演目を5年ぶりに上演する。

武士と花魁(おいらん)の人情話で、勘九郎は「鶴瓶師匠の落語を聞きにいって、絶対に歌舞伎にしたいと楽屋で直談判させていただいた」と当時の経緯を語る。花魁を演じる七之助の美しさが話題を集め、「『七之助がきれい』という反響が大変多かった。私としては『でしょ?』という感じに尽きます。今回も廓(くるわ)のラストシーンなど、美を追究したい」と笑顔で話した。

七之助も「ずっと再演したいと兄弟で話していた作品」という。「歌舞伎の女形って、前半あれだけ一生懸命やったのに一幕で終わりとか、死んで終わりとか、幕切れにいないことが多いんですけど」と笑い、「この『浦里』はいろんな色を見せながら最後までいるので得なんです」。また、「女形の後輩たちがここぞとばかりに楽屋に押し寄せて、やりたいやりたいと。(尾上)松也は『外に出られないくらいボロ泣きしちゃったよ』と言ってくれて」と、キャラクターの魅力を語った。

ACTシアターは22年夏から舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」の専用劇場となるため、同所での赤坂大歌舞伎は今回が最後となる。踊りの演目では、勘九郎の長男勘太郎(10)、次男長三郎(8)も出演する。七之助は「ACTがひと区切りなので、恩返しじゃないが、華やかに、みんな勢ぞろいで大団円の踊りにしたい」としている。