将棋の藤井聡太3冠(王位・叡王・棋聖=19)が豊島将之竜王(31)に挑戦する、第34期竜王戦7番勝負第4局が12、13の両日、山口県宇部市・ANAクラウンプラザホテル宇部で行われ、後手の藤井が豊島を破り、開幕から4連勝で竜王を奪取した。 これで将棋界にある8つのタイトルのうち、半分の4冠を同時に保持。羽生善治九段(51)の22歳9カ月の最年少4冠の記録を28年ぶりに更新する19歳3カ月で4冠となり、史上初の「10代4冠」が誕生した。豊島は無冠になった。

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将棋ファンでお笑いコンビ「サバンナ」の高橋茂雄(45)は、「歴史が今、作られているという濃密感を堪能できました」と満足そうだった。今年6月の王位戦から始まった「藤井対豊島名勝負数え歌」。「付き合い始めたばかりの男女よりも、多くの時間を過ごしていると思います」と表現した。

昨年、「観る将」(将棋の対局を観戦することが好きなファン)として開花した。きっかけはもちろん、藤井聡太。20年6月に始まった棋聖戦5番勝負を見て、「もっと詳しく知ろう」と感じた。4年前のデビュー29連勝以来、将棋のニュースを見始めたという。「多くの棋士の記録、個性、伝説、タイトル戦の歴史などについて知りたいと思うようになりました」。知的欲求もかき立てられた。

今年7月、名古屋市内のホテルで行われた「棋聖戦初防衛祝賀会」でトークショーを行った時、控室のパーテーションを隔てた向こうにあこがれの棋士がいた。ネクタイをプレゼントした。「ファンの前でのお話しとか、控室での関係者へのあいさつとか、19歳と思えない立ち居振る舞いでした。19歳の僕よりはるかにスマート。純度100%でした」と、その人柄にすっかり魅了された。

漫才の世界では相方との運もある。「将棋の棋士は実力のみが評価値。覚悟を決めて道を切り開き、盤に集中して動きで対話されている。戦うすさまじさがかっこいいと思います」。

今度藤井竜王に合ったら、1局お願いしたいと思っている。「藤井先生は王将1枚。1分将棋のハンディでどうですかね」。研究会をやりたい相手や「『鬼滅の刃』などの俗っぽいことをどこまで知っているかも尋ねてみたいです」と笑う。

将棋界の歴史は大きく動いた。「観る将」としては、藤井8冠をぜひ見たい。同時に誰がその快進撃を止めるのかも見てみたい。盤を挟む両者に思い入れがあるからだ。「タイトル戦で、藤井羽生戦が実現するのを楽しみにしたいです」。完全にファン目線の将棋応援団になっていた。【赤塚辰浩】

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