関東地方では7日が「松の内」の最終日(関西地方は15日が主流)。この日朝までに正月飾りを片付けて、七草がゆを食べるのが風習だった。こうした風習はあまり見られなくなったが、正月気分はここまでと言った感じだ。

さて年末年始の地上波のテレビ番組で、今回特に気になったのが「一挙放送」や「イッキ見」とタイトルについた番組が多かったことだ。以前から同種の番組はあったが、今回の年末年始はやたらと目についた。

例えば「孤独のグルメイッキ見」(テレビ東京)。「99・9-刑事専門弁護士-」「天国と地獄~サイコな2人~」「ドラゴン桜 全話一挙放送SP」「義母と娘のブルース~全作一挙放送SP!!」(いずれもTBS)。「ハコヅメ一挙放送SP」(日本テレビ)。「フリーター、家を買う」(フジテレビ)。テレビ朝日は一挙放送ではないが、「相棒」をセレクションなどのタイトルで放送した。

NHKも「イッキ見!タイムスクープ選」「昔話法廷スペシャル一挙放送」「イッキ見!新選組!スペシャル」などを放送した。

理由としては、それらの新シリーズや、主演者の新番組などにつなげる“番宣”として効果を発揮している面がある。NHKの「新選組!」は三谷幸喜氏が脚本を担当した大河ドラマで、9日から開始予定で同氏脚本の「鎌倉殿の13人」への布石だった。「新選組!」の主演が年末に結婚を発表した香取慎吾だったことも奏功した。

もう1つの理由は、視聴スタイルの変化だろう。日本でもさまざまな動画配信サービスが充実し、既存のテレビ局の放送で見なくても、いつでも好きな番組が見られる時代となった。配信サービスは有料のケースが多いが、既存のテレビ放送なら無料で視聴、録画してもらえる。「イッキ見」や「一挙放送」は、いまや1つのコンテンツとして成立しているのだろう。

かつては制作費の削減や、年末年始の労働環境の改善などのために、再放送番組を多くしていると言われた。年明け後の深夜番組が、映画の放送ばかりという時代もあった。今もそれが大きな理由の1つであろうが、「一挙放送」「イッキ見」は多少なりとも視聴者のニーズがあるからこそ成立しているのだろう。とは言え、良質な番組でなければ「一挙放送」と銘打っても見てもらえない。今後の年末年始に向け、視聴者に「一挙放送して欲しい番組」のアンケートをしてみてはいかがだろう。【笹森文彦】