東映時代劇の看板スターとして日本映画界の全盛期を支えた、萬屋錦之介(中村錦之助)さんの生誕90周年を記念し、主演映画の代表作「宮本武蔵」(内田吐夢監督)5部作のデジタルリマスター版を東京・丸の内TOEIで29日から初上映する。4日、東映が発表した。

萬屋さんは、21歳だった1954年(昭29)に歌舞伎役者から映画界へ転身。美空ひばりさん所属の新芸プロが製作し、松竹が配給し、ひばりさんとの共演が実現した同2月の映画「ひよどり草紙」(内出好吉監督)で銀幕デビューを果たした。そして、同3月の新東宝製作の映画「花吹雪御存じ七人男」(斎藤寅次郎監督)への出演を経て東映に移籍し、同4月の「新諸国物語 笛吹童子 第一部どくろの旗」(萩原遼監督)に出演。その後、一躍、スターとなり、映画界を代表する俳優となった。出演映画は150本を超え「錦ちゃん」という愛称で多くの人々に生涯、愛され続けた。

代表作の1つ「宮本武蔵」シリーズは、吉川英治原作の国民的剣豪小説「宮本武蔵」の映画化作品。名だたる監督たちによって、たびたび映画化されているが、内田吐夢監督の「宮本武蔵」シリーズは決定版と言われている。武蔵という青年が剣豪として、そして人間として成長していく壮大なドラマと、剣を使ったダイナミックなアクションが見事に表された第一級の本格時代劇として評価が高い。

また全5部作は、テレビが世の中を席巻し始め、邦画界の斜陽を感じた内田監督自身が、邦画を守ろうとの思いから1年1作、5年の歳月をかけて挑んだ、前代未聞の超大作プロジェクトとも言われている。武蔵の師・沢庵和尚役には三国連太郎さん、宿命のライバル・佐々木小次郎役には高倉健さんと、豪華キャストとの共演も見どころの1つだ。

リアルタイムでシリーズを見ている、スタジオジブリの鈴木敏夫氏は東映を通じ

「内田吐夢版『武蔵』が他作品と比較して際立つのは、武蔵が貫く激しい自己主張。自由に呼吸し、奔放に生きるその様に心引かれて、ついつい何度も見てしまう」とコメントした。

【上映スケジュール】

◆29日~5月5日 「宮本武蔵」「宮本武蔵 般若坂の決斗」

◆5月6日~12日「宮本武蔵 二刀流開眼」「宮本武蔵 一乗寺の決斗」

◆5月13日~19日「宮本武蔵 巌流島の決斗」

料金は1200円で、各回完全入替制の1本立て興行となる。