文化放送開局70周年を記念して、6日に行われた「海援隊・南こうせつ・さだまさし・グレープ セイ!シュン コンサート」を取材した。そうそうたる出演者で、東京・丸の内の東京国際フォーラムホールAにはコロナ禍で制限されたキャパ満杯の5000人の観客が訪れた。

それぞれのヒット曲オンパレードのコンサートなったが、南こうせつ(73)とさだまさし(69)がロシアのウクライナ侵攻を意識して、それぞれ持ち歌の反戦歌を歌った。

こうせつはかぐや姫時代の「あの人の手紙」(作詞・伊勢正三、作曲・南こうせつ)。72年4月に発売されたアルバム「はじめまして…」の収録曲である。たった1枚の召集令状で戦場に駆り出された愛する人。日常は大きく変わり、その愛する人は別れを切り出す。それは死を覚悟した決断で、それからしばらくして女性の元に愛する人の死を知らせる手紙が届く。戦争がもたらす悲惨さと絶望を表現していた。

さだは、6月の新アルバム「孤悲(こい)」に収録される新曲「キイウから遠く離れて」を披露した。キイウは、これまでロシア語読みだったウクライナの首都キエフのウクライナ語読み。あなたが銃で撃つのはあなた自身の自由と未来だ、力で心を奪うことはできないと歌う。さだは04年に反戦歌の傑作といわれる「遙かなるクリスマス」を発表している。イラク戦争を意識した作品で、世界の平和と小市民的な自分の平和に葛藤を抱く歌詞だ。グレープの吉田政美(69)とその後に結成したレーズンでも、「あと1マイル」という反戦歌を歌っている。あと1マイル(約1・6キロ)で安全な自陣にたどり着けるのに、兵士は目前で銃弾に倒れた。1週間後に母のもとに手紙が届いた。「僕はいい兵士にはなれない」と書かれていた。

ロシアのウクライナ侵攻後、さまざまな歌手がコンサートなどで反戦歌を歌っている。プロテストソング(抗議の歌)の1つである反戦歌は、ベトナム戦争に反対して世界各国で数多く作られた。日本にもさまざまなジャンルの歌手による数多くの反戦歌がある。それらは決して時代錯誤の歌ではない。いまだからこそあらためて聴く意義は、十二分にある。【笹森文彦】