宝塚歌劇団出身で、元星組トップ紅(くれない)ゆずるが1日、地元の大阪市内で、コロナ禍中止を経て1年半越しの再演が決まった「アンタッチャブル・ビューティー~浪花探偵狂騒曲~」(9月17~25日、大阪松竹座)取材会を開き、「鏡の前で笑え」と、コロナ禍への心構えを語った。

19年秋に退団した紅は、大阪で生まれ育った生粋の“大阪人”。在団中から抜群のコメディーセンスを発揮し、今作品は、昨年4月に退団後初主演舞台として上演が決まっていた。ところが「(本格)稽古4日目で止まり」、新型コロナウイルスの感染者が出た影響で、公演中止に追い込まれていた。

「この1年半、自分のセリフじゃないところも読み、台本もより伝わりやすく、歌も複雑な音階で心情をより深く表現して、パワーアップしました。この1年半は無駄ではない-ということです」

「世界各国でも崩さない」という大阪弁のイントネーションで語った。

物語の舞台は大阪・ミナミ、下町のシャッター商店街。紅は、ダンスや演技経験もある探偵志願の主人公・本間カナにふんし、劇中、歌って踊る場面もある。共演は三田村邦彦に加え、吉本新喜劇元座長の内場勝則ら「あこがれの」喜劇役者と組む。

もともとは一昨年9月予定がコロナ禍で中止になり、昨年4月に日程変更。その中止を経て、今回、2度の仕切り直しになり、ようやく上演へ向かう。

「私の引き寄せの法則がかなった! と言いますか、もちろん、松竹さんやスタッフ皆さまの尽力のおかげなのですが、でもね! そこに1ミリぐらいは、私(の引き寄せの力)も入ってるかな、と」

舞台へかける思いの強さをこう表現した。紅自身だけではなく、古巣の宝塚歌劇団も、相次ぐコロナ禍中止に見舞われ、見えない敵との闘いは続く。では、その心構えは-。

「これ、まともに向き合ってたら、病みますよ。起こってしまったことはしょうがない。悔しいけど、でも、私らより、ファンの方がもっと沈んでる。私たちは元気にさせてあげないといけない。だから、沈んでもいいけど、一刻も早く上がらないと! 考える時間がもったいない」

その紅流の秘策は-。

「まずね、鏡の前でとりあえず笑ってみる。医学的にも口角上がるだけで楽しくなってくると聞きますし、とにかく、鏡の前で笑うことです」

もともと、宝塚在団中から歌舞伎好きで、今回上演される大阪松竹座にも足しげく通った。「大阪人冥利(みょうり)に尽きる」という場所、作品での舞台だ。もちろん、また中止になるのでは? との不安もある。だが…。

「恐れても仕方ない。恐れる時間があるなら、どうしたらお客さまがもっと喜んでくれるか考えた方がいい。細心の注意を払って、稽古後にご飯でも行きたいところ、抑えて」

大先輩の三田村を「くにくに」と呼ぶほど、共演者との絆も強くなった。喜劇にとって、何より大事な「間」に生きてくる。「(コロナ禍で)しんどい、残念な気持ちが一気に明るくなる舞台にします」と約束していた。