自主映画の祭典「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」(同所で9月10~25日開催)ラインナップ発表会が3日、東京・国立映画アーカイブで行われた。

今年は、コンペティション部門のPFFアワード2022に520作品の応募があり、16作品(共同作品があり監督17名)が入選した。荒木啓子ディレクターは「特徴的だったのは、初めて撮った人が、すごく多い。半数以上が初監督作品。なぜ、多いのか? 何と、コロナ禍で時間が出来て、今まで映画を撮ってみたかった人が、初めてやってみようと思った、ということ。コロナで考える時間と、夢を実現する時間が出来た。そのことに非常に感動しています」と説明した。

PFFアワードは、セレクションメンバー18人が4カ月間、討議を重ねて入選の16作品を選んだ。多数決はせず、1作品を最低、4人のセレクションメンバーが見て、見て欲しい作品を推薦し、それを18人全員で見て2日間かけて話し合うことを、ひたすら繰り返してきたという。

その入選16作品を、最終審査員5人が見て、討議して、9月22日の表彰式でグランプリ、準グランプリそれぞれ1作品、審査員特別賞3作品を発表する。最終審査員は、17年「幼な子われらに生まれ」、15年「繕い裁つ人」などで知られる三島有紀子監督、ジェーン・スーのエッセーをドラマ化し、話題となったテレビ東京系「生きるとか死ぬとか父親とか」で知られる菊地健雄監督(44)、「浪曲映画祭」で知られる浪曲師の玉川奈々福、とよた真帆、光石研が務める。

ラインナップ発表会には、三島監督が出席した。自主映画出身の同監督だが「審査員として呼んで頂いて、恥ずかしいんですけど…。私は88年から撮り始めたんですけど、ちょうど塚本晋也監督が賞を取られた。とんでもない…恥ずかしくて、自分は出せないわと」と、自身は応募したことがないと吐露。その上で「とにかく、自分の撮りたいものを自由に作って、見て頂くことを、ただ繰り返そうと。ぴあフィルムフェスティバルには出せないわという、なかなか、へなちょこな感じでした」と自身の若い日を振り返り、苦笑した。

だからこそ「応募する方は、すごいという感じ。素晴らしいと思う。今の私だったら、もうちょっと神経が、ず太いから出せていたかなと思いますけど。当時は大先輩しか出してはいけないと思っていた、出してはいけないと敷居が高かった」と作品を応募したクリエイターをたたえた。その上で「審査員も、とんでもございませんという感じだったんですけど…私みたいな、出せなかったような人間が何とか、はいつくばりながら映画を作っている」と感慨深げに語った。

三島監督は、自主映画を製作するクリエイターたちへのアドバイスを求められると「自主映画を作っていらっしゃる方は皆さん、不安だと思いますけど、ここに出せるという目的があれば、作りがいがあるというもの。すごく大事」と、ぴあフィルムフェスティバルの意義を強調。その上で「今は、どんな時代になってくるか、分からない。ウクライナ問題、コロナ禍もありますし…我々も、この業界も来年、どうなっているか分からない。そんな中、今年、きちんと開かれること自体が1つの奇跡なんだろうと思い、私も参加します」と熱っぽく語った。