阿部寛(58)が26日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた主演映画「異動辞令は音楽隊!」(内田英治監督)初日舞台あいさつで、演じるため1からチャレンジしたドラムを購入しようと熟慮していると明かした。

阿部は劇中で、アポ電強盗事件の主犯の手下とにらむチンピラを礼状もなしに締め上げる一方、署内でも高圧的な態度で浮き、捜査1課から警察音楽隊への異動を余儀なくされた成瀬司を演じた。音楽劇に初挑戦の内田英治監督から、音楽隊を演じる俳優陣に、吹き替えじゃなく自ら演奏シーンも演じて欲しいと要請があった。

阿部は楽器すら触ったことがなかったが、音楽隊でドラムを担当する成瀬を演じるにあたり、徹底して練習に取り組み、劇中ではたくみなスティックさばきと、ダイナミックな演奏を披露した。

阿部はドラムが好きになったといい「(撮影が)終わった時、一瞬、買おうかと思ったけれど、家に置けないし、音は出せないし。今でも悩んでいる」と笑みを浮かべた。阿部演じる成瀬の元部下の捜査第一課巡査部長・坂本祥太を演じた磯村勇斗(29)は「僕は1度(ドラムを)役でやったことがありますが、無理と思って買わなかった」と笑った。

内田監督は、トランペット担当の来島春子を演じた清野菜名(27)を含め、俳優陣に楽器の練習を求めたことについて「ずっと後ろめたかった。メチャメチャ大変なんですよ。僕が想定していた演奏を、あそこまで持っていくのがメチャメチャ大変」と振り返った。その上で「阿部さんと清野さんは毎日、練習して長く長く…何もやっていない自分が後ろめたいなと。脚本を書いておいて、ラストシーンを撮ったとき、演出家ですけど感動しました。ミッション・インポッシブル…楽器をやっていない人にやらせた。感動しました」と俳優陣をたたえた。

トークの中で、阿部演じる成瀬が思いも寄らぬ異動を強いられた物語にちなみ「何で俺が?」との共通質問が出た。阿部は

「なんで俺にドラム」

とフリップに書いた。その上で「楽器が本当に苦手で一番、苦手意識があったドラム。過去の作品を見ていて一番、避けたかった。内田さん自体が音楽映画、初めてということで一緒に挑んでいけたら楽しいと思った」と語った。

一方、清野はフリップに

「何で私がトランペット!?」

と書いた。その上で「高校生からギターを独学でやって、ドラムも習った。吹く楽器は初めてなので…でも、ドンドン、いろいろな音が出てくると楽しくなって、もっとやりたい気持ちになった。面白いなと思いました」と振り返った。

内田監督は、阿部にドラムを叩かせた理由について「主人公は、サックスかドラムかトランペットを思った。阿部さんに出ていただくならドラムだろうと…個人的に好きなパートをやってもらおうと。迫力あるし、たたいている感情が芝居に出てくる顔が、演奏とリンクして好き」と説明。清野にトランペットを任せた理由についても「10代から付き合いがあり、勝手にラップとか思った。出ていただくにあたり、ジャズのイメージが強い。とても似合うと思った。完ぺき主義で、ちゃんとやりたいと、見ていて痛々しいくらいやった。ほぼ、ほぼ完ぺきにやった」と説明した。その上で「おふたりとも完ぺきで脱帽です」と絶賛した。

阿部は最後に「1番、苦手にしているもので、芝居どころじゃなかったので映像に出た。感謝します」と笑みを浮かべた。その上で「試写会で知らないうちに涙が出たのが初めてだった何で泣いたんだろう…彼(成瀬)が変わったのが良かった」と熱く語った。