河瀬直美監督(53)が10日、前日9日に放送倫理・番組向上機構(BPO)が、NHK BS1で21年12月26日に放送(同30日に再放送)したBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」に、重大な放送倫理違反があったと判断したと発表した件について、所属事務所の公式サイトに声明文を発表した。

河瀬監督は「NHK BS1スペシャル番組に関するBPO放送倫理検証委員会の意見書発表について」と題した声明文の中で「昨日、表題にもあります通り、BPOよりNHK BS1スペシャルの番組に関する意見書が発表されました。公共放送であるという自覚と意識を再確認し、大きな影響力があるテレビ放送というものに携わるあらゆる立場の方々が、より真摯に番組制作をして頂くことを、切に願います」とつづった。

NHKは、河瀬監督の教え子X氏が東京五輪期間中に取材、撮影するところに密着した。その中で、X氏が取材した年配の男性が公園で「デモは全部、上の人がやるから(主催者が)書いたやつを言った後に言うだけだから」「予定表をもらっているから、自分。それを見ていくだけで」などと語っている。その取材の前に男性が街中を歩いているシーンが流れるが、そこに「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕をつけた。

ただ、当該男性は約2時間のインタビューの中で、五輪反対デモに参加した経験があるとも、参加の予定があるとも語っていない上、五輪反対デモには関心がなく、行ったこともないと明言。一方で、番組ディレクターはカメラが回っていないところで、男性は五輪反対デモに行く予定はあると語ったとし、それが放送内容の根拠だと説明したが、そのやりとりは録音や録画、メモで記録されておらず、男性に対してデモに参加したことを確認もしていなかった。