安倍晋三元首相銃撃事件を起こした、山上徹也容疑者(42=殺人容疑で送検、鑑定留置中)を題材に描いた映画「REVOLUTION+1」が、安倍氏の国葬当日の27日午後、東京・渋谷のLOFT 9 Shibuyaで上映された。

上映されたのは、8月末に8日間で撮影した映像を国葬当日までに上映が間に合うよう編集した、約50分の緊急特別上映版。

足立正生監督(83)は、国葬が行われた日本武道館近くに足を運び、上映前に会場に向けて映像を配信した。その後、150席がおよそ1日で完売した会場に到着。「今日、上映するために映画を作った。それに尽きる」とした。

映画は、冒頭から安倍元首相が銃撃された当時のニュース映像に、タモト清嵐(そらん=30)が演じる山上容疑者をモデルにした川上達也を描いたドラマパートを絡めて展開していく。宗教2世の苦悩も描かれる物語に、安倍元首相のスピーチの映像が絡み、同氏の幼少期や青年時代の写真、祖父の岸信介氏、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の創立者・文鮮明氏らの写真も、川上の室内に貼られる形で登場。脚本は足立監督と共同脚本の井上淳一氏が、7月8日の銃撃事件直後に企画。報道を元に3日で初稿を書き、その後も随時、報道を受けて7稿まで改定して作成した。

前日26日に東京・新宿と茨城で先行上映。27日は渋谷のほか名古屋、新潟2館、長野2館、京都、沖縄2館のみの上映で、未見の人が多いであろう状況ながら、賛否両論が沸騰している。

山上容疑者本人を英雄視したり、礼賛するような映画ではないか? などの見方に加え、映画製作、公開自体が不謹慎と批判する声も少なくない。容疑者本人をはじめ直接、取材しないのか? との声もある。

緊急上映を行う劇場にも抗議が入り、29日に上映を予定していた鹿児島の映画館は、テナントに入っているデパートに長時間の抗議電話が入ったことで上映中止に追い込まれた。

一方で、1回限りの上映だった名古屋と沖縄の映画館が、上映回数を増やすなど、映画を見たいという声も少なくない。

足立監督は、賛否両論があるが? と尋ねられると「批判は全部、引き受けようと思っている」と答えた。その上で「犯罪は、犯罪。犯罪という結果に関しては明白。彼(山上容疑者)を英雄視しない、という前提で、この映画を作っている」という見解を述べた。一連の報道を元に、脚本を創作したことへの是非を問う声にも「山上の心の中を、のぞくということ…それは我々、映画を作る、表現を試みる者の作業。それが山上と向き合うということ」と、映画監督として、想像する形で映画として事件を表現したという。

「僕らの若い頃より、生きづらい…若者は極限まで追い込まれている。切れる人、切れざるを得ない人が、それだけ多いのかと悲しみます。山上の(事件の)実行も、悲しみます。そういうところにきている。100%、若者を見詰めるところからやりたかった」と製作した意図を語った。

年内にも約80分の完全版を公開する方向で動いているが、タモトは「追加撮影があると聞いています」とした。足立監督も「本編の編集は90%終わっている。部分修正のものと最終的に足りないと思ったものを1、2日、やるだけ」と認めた。

「国家、政治は、からっぽ。(安倍元首相の祖父の)岸(信介元首相)時代から(旧)統一教会と組んできたことを、国民が忘れると思っている。僕は映画を作ったら、映画を見てくれとしか言いたくないけれど、国葬だけは許せなくて未完だけど上映した。許しちゃいかんですよ」と話した。