新世代のガールズグループがデビューした。平均年齢16歳の6人組「Daisy(デイジー)」。メンバーは杏藤心娃(ここあ、12)鈴羽さくら(18)ゆきな(19)葉月ひな(17)七瀬しの(15)白咲乃愛(しろさき・のあ、17)。

注目すべきは、esports(略eスポ)とアイドルを融合した「eドル」を目指すことだ。eスポとは世界で過熱する対戦型ゲーム競技のこと。新ジャンルのeドルとして、アイドル市場とeスポ市場の両方で活躍しそうだ。

Daisyは、8月下旬に千葉・幕張メッセなどで行われた一大音楽イベント「SUMMER SONIC 2022」でデビューした。「Shoot Shoot Me」「CHAO!!」「ガチャガチャ」の3曲を、巧みなダンスとともに披露した。アイドルファンだけでなく、ヒップホップ系の音楽ファンもくぎ付けとなった。

実は3曲のタイトルや歌詞に、数々のゲーム用語が登場している。

「ガチャ」(キャラクターを入手するシステム)「LR」(コントローラーのLボタンとRボタンの意味)「モブキャラ」(その他大勢の意味)「マルチエンド」(エンディングが自分の選択で変えられるゲーム)「ストラテジー」(勝利に熟考を必要とするゲーム)などなど。それらが歌詞に巧みに折り込まれ、3種のラブソングやメッセージソングになっているのだ。CD発売はこれからだが、話題になるのは必至だ。

理由は、Daisyが世界で大流行の対戦型ゲーム競技eスポとアイドルを融合させた「eドル」プロジェクトから誕生したからだ。関係者は「eスポは世界的に男性プレーヤーが圧倒的に多い。ともにオタク文化の女性アイドルユニットとは親和性が高い。Daisyはeスポもできて、歌って踊れる初のアイドルを目指して結成されました」と言う。

結成のきっかけは、10月7日から始まるTOKYO MXの30分の新番組「eスポ君何人格?」(金曜午後6時30分)だった。ゲーム好きの女の子が集まり、eドルを目指して、プロから特訓を受け、ゲーマーとして成長していく番組である。出演者のオーディションが6月に行われた。アイドル性だけでなく、ゲーム好きという必須条件をクリアし選ばれたのがDaisyの6人だった。

番組でDaigyは、人気ゲーム「第五人格」を使って特訓を受けるだけでなく、進行役や主題歌(「Shoot Shoot Me」)も担当する。関係者は「日本は世界に比べeスポは遅れています。大リーガーの大谷(翔平)選手のように、『eスポと言えば○○』というアイコン的な存在が出てこないと盛り上がらない。Daisyがアイコン化することで、eスポ業界の成長と活性化の一助になれれば」と語る。

もちろん純粋なアイドルとしての夢も持つ。最年少の12歳でセンターボーカルを務める杏藤心娃は「夢は紅白出場を目指したいです」と語る。鈴羽さくらは「TIFに出たいです!」。TIFは東京アイドルフェスティバルで、200組以上が出演するアイドル界の一大イベントだ。

アイドルには正統派だけでなく、井森美幸や森口博子らが元祖の「バラドル」(バラエティーアイドル)。雑誌のグラビアページなどで魅了する「グラドル」(グラビアアイドル)。ZONEなど女性バンドの「バンドル」(バンドアイドル)など、時代とともにさまざまなジャンルのアイドルが登場した。「eドル」は、まさに新世代のハイブリッド(異種混合)アイドルである。

Daisyは英語でひな菊の意味。太陽の光を受けると花が咲き、晴れない日や夜は花を閉じる性質を持つ。関係者は「Daisyもスポットライトを浴びて花開くように」と命名されたという。Daisyは英語の俗語で「一級品」の意味も持つ。最高のアイドルグループとして注目されそうだ。【笹森文彦】

◆esports(eスポーツ) 「エレクトロニック・スポーツ」の略で、主にPCやゲーム機を使い複数人で対戦するスポーツ競技を言う。競技人口はプロも含め1億人を超える。韓国、アメリカ、中国、ドイツなどが盛んで、優勝賞金が数億円の世界大会もある。種目は格闘ゲーム、銃などで敵を倒すゲーム、現実のスポーツをシミュレーションしたゲーム、レースゲームなど多種ある。オリンピックでの正式競技採用が期待されている。