宝塚歌劇星組公演「ディミトリ~曙光に散る、紫の花~」「JAGUAR BEAT」が12日、兵庫・宝塚大劇場で開幕。トップ礼真琴は、2国の間に揺れ絆を壊されても愛を貫く“人質王子”を好演し、ショーでは俊敏かつ勇猛なジャガーにふんしてダンス、歌、芝居と高いスキルで3拍子そろった本領を発揮した。

芝居は、13世紀のジョージア(旧グルジア)を舞台にした並木陽氏の小説「斜陽の国のルスダン」をもとにミュージカル化。礼は、人質としてジョージア国へ送られたルーム・セルジュークの王子ディミトリを演じ、ジョージア王女で、前王の遺言から女王となるルスダン(舞空瞳)と結婚。運命に翻弄(ほんろう)されても、ルスダンへの愛に命をかけていく。

この作品で鍵になるのは超人的ステップ、跳躍が特長のジョージアン・ダンス。芝居のキャッチコピー「勇気とは何か」を体現するように、ジョージアの民族衣装をまとい、華麗なダンスをおりまぜて、王子の苦悩、希望を表現した。

礼は稽古段階から試行錯誤を重ね、役柄を「本当に息苦しい人生を送っている」ととらえていた。開幕前の取材では「勇気とは何かを探していく物語。結果、見てくださる方が勇気を持って進めるためにも、私も勇気をもって進みたい」と誓い、役作りを重ねた。

芝居演出の生田大和氏が、ジョージアン・ダンスを宝塚歌劇に取り入れたいと考え、劇団きってのダンサー礼主演で実現した今作。礼は「芝居の中でも、場面ごとに(同ダンスが)見せ場となるであろう場面もある」と言い、見せ方も研究してきた。

ルスダンにふんしたトップ娘役舞空瞳は、運命の波に揺らぐことなくまっすぐ進む女王を情熱的に表現。礼と同期の瀬央ゆりあがジョージアを侵略する亡国ホラズムの王ジャラルッディーンを演じた。

本拠地作としては今回から星組に加わった暁千星が、前王への忠誠心ゆえにディミトリへの憎しみを募らせるジョージアの副宰相を熱演。代わって、今作を最後に花組へ復帰する綺城ひか理は、ディミトリがあこがれる前王ギオルギにふんした。

礼も「今、このメンバーでがっちり固めてくれる頼もしい存在がいるからこそ、成り立つ作品」と言い、臨んだ今公演。ショーでも礼、舞空のダンサーコンビに、劇団有数のダンサー暁が加わり、現体制の星組の充実ぶりをアピール。2022年の宝塚歌劇最後の本拠地作で、星組のスターが存分に技量を発揮している。

兵庫・宝塚大劇場は12月13日まで、東京宝塚劇場は来年1月2日~2月12日。