俳優の渡辺徹(わたなべ・とおる)さんが11月28日、敗血症のため亡くなった。61歳だった。所属事務所の発表によると先月20日に発熱、腹痛などの症状が出たために都内の病院に受診したところ、細菌性胃腸炎と診断され入院。その後、敗血症と診断され治療を受けていたという。

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伝説の刑事ドラマ「太陽にほえろ!」の新人刑事役に抜てきされたのは20歳の時だ。歌手としてもトップアイドル並みの人気となり、当時の立ち位置はいつもステージの真ん中だった。が、司会業となれば、一歩引いて芳村真理や和田アキ子といったツワモノたちのサポート役をこなす、器用で謙虚なところがあった。

「太陽-」でのボス役石原裕次郎さんとの出会いが大きかったと思う。出演が決まった時のエピソードを聞いたことがある。裕次郎さんは入院中で、初顔合わせはその病室だった。周囲のスタッフに退室を促した裕次郎さんは、ベッドから立ち上がって渡辺さんの手を握る。「今、俺こんなで、現場に迷惑かけているけど、その分よろしく頼むな。復帰したら同じ役者同士、ライバルだからな」。そう話すと力強くハグしてくれたという。

「僕はまだ文学座の研究生ですよ。雲の上の人なのに全然偉ぶったところがない。大きさを感じ、姿勢を学ばなくてはいけないと」

一方で、アクション特訓で収録前に69キロまで絞った体は、5年間の出演中に130キロへ倍増した。収録後の石原軍団ならではの打ち上げで、毎度ドカ食いしたのが原因だ。出演期間で「もっとも外見の変わった新人刑事」とも言われた。

愛嬌(あいきょう)のある体格はその後のタレント業の魅力ともなったと思う。いろんな意味で「太陽-」の現場こそが渡辺さんの原点だった。【相原斎】

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