映画や演劇界のハラスメント被害をなくす活動をしてきた馬奈木厳太郎弁護士(47)に、性的関係を迫るなどのセクハラをされたとして「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」代表の女性が3日、声明を発表。2日付で馬奈木弁護士を相手に、1100万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたことを明らかにした。同弁護士は、同会の顧問を務めていた。

女性は声明文の中で「第二東京弁護士会に馬奈木氏の除名や、生涯弁護士として活動しないということを求めたいと思います」とした。そして「演劇界では昨年男性俳優が自死を遂げ、ほぼ時を同じくして、ある女性俳優もレイプや複合的な要因によって自死しています。そのことはほとんど誰も知らないと思います。しかし演劇界には暴力とレイプが蔓延しています。そんな業界だからこそ馬奈木氏が私への加害から一年の間、ハラスメント講習を実施することができたのだと思います」と、演劇界の現状を批判した。

その上で「文化庁や行政など公的な補助金が出ている多くの劇団が馬奈木氏のハラスメント講習を、お墨付きとして公演を打っています。ハラスメントが人権の問題だとわからず、ジェンダーアップデートを異様なまでに拒み、レイプしやすい土壌を確保する。演劇界は最低最悪の業界です」と、馬奈木氏のハラスメント講習が演劇界に広まっていたと指摘。「文化庁及び行政に、馬奈木氏が関与した企業・芸術団体に対して、公金を財源とし支払われた補助金の返金や、打ち切りを求めたいと思います」とした。

一方、馬奈木弁護士は1日、ブログに、女性へのセクハラを認め、謝罪する文書を公表した。

「昨年末、その方から私の所属弁護士会に対して、私の懲戒処分を求める懲戒請求書が提出されました。その懲戒請求書を読み、私は初めてその方が私との関係を全く望んでいなかったこと、精神的苦痛を感じ困惑を覚えながら、弁護士という私の肩書や私との年齢差、人間関係への配慮から強く抗議できず、私の言動に苦しんでいたことを知りました」

「私は、その方とは数年来の知り合いであり、事件の依頼を受ける前からプライベートでも頻繁に連絡を取り合い、食事なども共にする間柄でした。私は、そのような関係を続けるうちに、私自身が既婚でありながら、その方に対して好意を抱いてしまいました。そして、私は、その方も私に対して好意を寄せていると思い込み、身体に触れたり、身体の部位に言及したメッセージを送ったり、性的関係を誘うメッセージを送ったりしました」

「その方からはこれらを拒むメッセージや言葉を受け取っていたのですが、私はそのメッセージや言葉を真摯に受けとめず、自らの都合のよい方向に解釈し、性的関係を誘う言動を続け、依頼を受けていた裁判の対応にまで言及して、その方を追い込み苦しめてしまいました。私は、依頼者と代理人という関係にあるなかで、性的関係を迫る言動を続け、その方を苦しめる状況を作り出しているということを認識できていませんでした」

馬奈木弁護士は「ハラスメント講習の講師や、ハラスメント問題に関する取材を受けるといった資格がありませんので、今後はこれらの活動を一切行いません」とし、専門家による診断やカウンセリングも受けるとし、謝罪している。

馬奈木弁護士は、東京電力福島第1原発事故の避難住民らによる集団訴訟の原告側代理人を務めている。また、20年6月に映画の配給や映画館などの経営を行う「アップリンク」代表からハラスメントを受けたとして、元従業員が東京地裁に同氏と同社に対して損害賠償などを請求する訴訟を起こした際も、原告の代理人を務めていた。