女性講談師、田辺銀冶(ぎんや、40)がアンデルセンの同名童話をもとにした舞台「パンを踏んだ娘」を、4月2日に東京・高円寺の「座・高円寺2」で上演する。第1部が講談「アンデルセン」、2部が銀冶の講談にのせて「パンを踏んだ娘」を、講談を超えた“kodan cross”として再現する。

「パンを踏んだ娘」は、アンデルセンが1860年に出版。裕福な家庭に奉公出たインゲルという美貌を鼻にかけた娘が、ぬかるみを通るためにパンを放り投げ飛び乗る。そのまま底無し沼に沈み、地獄へ落ちる。舞台は講談の銀冶を中心にインゲル役のダンサー、薩摩琵琶、パーカッション、俳優たちが絡んでいく。

銀冶は「この作品のアニメがトラウマになっている、かつての子供達が少なからずいるそうですが、私の出会いは本でした。20歳を超えて大人になっていましたが、根性悪のインゲルという娘は、まるで私のようでした。アンデルセンはインゲルを許しましたが、なぜか私も許されたようで大好きな物語になりました」と振り返っている。

舞台化の話が進んだのは1年半前の秋だった。「行きつけの飲食店で、久しぶりに『パンを踏んだ娘』の話題を出して『いつか講談でやってみたい!』と言ったら、居合わせた写真家の加藤孝さんが面白いと乗ってくれて『これは講談を超えた“kodan cross”だ』とプロデュースを引き受けてくれました。当日はアンデルセンの218歳のお誕生日なんです」と笑顔を見せた。

演出は劇団東京乾電池の吉橋航也、出演は吉本由美、山本ふじこ、杉山恵一、パーカッション三沢またろう、琵琶・川嶋信子ら。

◆田辺銀冶(たなべ・ぎんや)1983年(昭58)1月24日、東京都杉並区生まれ。92年(平4)に講談師・田辺一鶴に入門して小むぎ。01年に講談協会を休会して米国、英国、韓国、ニュージーランドなどに遊学。06年に講談協会に復帰して銀冶。10年一鶴が亡くなり、母親の鶴英門下へ。11年6月二ツ目。21年5月真打ち。