「ナインティナインのオールナイトニッポン」の構成を94年7月から29年務める、放送作家・小西マサテル氏(57)の小説「名探偵のままでいて」が、「第21回このミステリーがすごい!」大賞を受賞した。このほど、取材に応じた。

同作は、認知症の元小学校校長が、孫娘が持ち込む事件の謎を、知性を取り戻して解決していく。

「きっかけは3年前に85歳で亡くなった父親。7年前から、レビー小体型認知症を患っていたんです。幻視といって、見えるはずのないものが見える。うちの父親は、朝起きると部屋に青い虎がいた。香川から東京に引き取って、どんどん良くなった。レビー小体型認知症の名前だけでも周知できればと、小さい頃から好きだったミステリーの形で書きました」

94年から「ナインティナイン-」の構成、14年10月からの「岡村隆史の-」をへて、20年5月から再び「ナインティナイン-」を担当している。

「94年7月から1部に上がる時に、たまたま僕に声をかけていただきました」

家庭を持った矢部浩之(51)が一時降板し、岡村隆史(52)が1人でパーソナリティーを務めていたコロナ禍の20年4月には“舌禍事件”で炎上したこともあった。

「僕はその現場にいたわけですから、忸怩(じくじ)たるものがあった。人当たりのいい岡村さんのことを、なんとか少しでも寄り戻したいと」

渦中の同年5月から矢部が復帰。「2人の紐帯(ちゅうたい)の強さたるや、なんという。『ここは矢部浩之しかない』と電話したら、即答で『行きます』と。『小西さんが泣いてるのが全てですよ』と言ってくれた」と目をうるませて振り返った。

岡村には今回の作品を応募する前に読んでもらったといい「新幹線の中で読んでくれて『ここ直した方が、いいですよ』と」アドバイスも受けたという。

「このミス」で大賞を受賞し、高校の先輩で、この世界へと導いてくれたウッチャンナンチャン南原清隆(58)からは電話が来た。「40年の付き合いで『すごいやないか、人生大逆転やないか』って言うから『待ってください。僕、失敗してないじゃないですか』って突っ込もうとしたら、涙が出てきて、声が震えちゃってね。そうしたら南原さんも、もらい泣きしてくれた。あれは、うれしかったですね。40年ですもん」と感慨深げに話した。【小谷野俊哉】

◆「名探偵のままでいて」 主人公の楓は、小学校の教師。かつて小学校校長だった祖父は、レビー小体型認知症を患い、幻視の症状に悩まされていた。だが、楓の周りで起きた不可解な出来事を聞くと、知性を取り戻し謎を解き明かしていく。

◆小西(こにし)マサテル 1965年(昭40)8月19日、香川・高松市生まれ。高松第一高、明大文学部時代は落研。明大時代に漫才コンビ、チャチャとして日本テレビ系「お笑いスター誕生」、フジテレビ系「冗談画報」などに出演。卒業後、渡辺正行に師事して放送作家に。94年7月からニッポン放送「ナインティナインのオールナイトニッポン」「岡村隆史の-」を現在に至るまで担当。他に「徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー」「鶴光の噂のゴールデンリクエスト」など。南原清隆の「ナンチャンお気楽ライブ」構成・演出も手がける。