3月末に朝日放送(ABC)テレビを退社し、現在テレビ朝日系報道番組「報道ステーション」でスポーツキャスターを務めるフリーのヒロド歩美アナウンサー(31)をインタビューした。入社前までプロ野球12球団が言えなかったヒロドアナをスポーツ取材の道に導いたのは、元阪神助っ人のマット・マートン氏(41)という。

未知の世界だった野球になぜのめり込んだのかと尋ねると、「きっかけはマット・マートン選手なんです」と切り出した。入社後の研修で、先輩から「お前、英語しゃべれるよな? 行ってこい!」と背中を押し出される形で同氏に話を聞いたという。「…エクスキューズミー? って(笑い)」と、初々しかった新人時代を振り返る。

「マートン選手を取材したことで打席を見るようになり、試合を見るようになる。試合を見るだけじゃなくてスコアも付けられたらいいなと思って、スポーツ部の先輩にスコアブックの付け方を教えてもらって。スコアを書けた達成感や、1つ1つクリアしていく感じがありましたね」

アナウンス部への配属前で、スポーツを担当することも決まっていなかったが、しばらくするとスポーツ部内でうわさが広がり「『ヒロド、スコアブック書けるらしい』みたいな。全然できてないのに、それだけ1人歩きして。今考えたら良かったことなんですけど」と笑いながら語る。

「マートン選手が私をスポーツキャスターにしました!と。そう言っても過言じゃないかもしれない(笑い)。そこから首位打者になって、うわ~みたいな感じでした」

スポーツ選手との対話では、試合にかける思いや陰の努力など、その人の背景に心を奪われるという。その高揚感はマートン氏に初めて話を聞いた瞬間から変わらず、先日フィギュアスケートの三原舞依を初めてインタビューしたことに触れながら「どんな思いで、どんなつらさがあったかと聞くと、よりフィギュアスケート!ってなるんです」と、ますます夢中になるようだ。

技術が光るスポーツの名場面にも胸を熱くするが、「最初はやっぱり人」という。今後もライフワークとしていく高校野球取材も、魅了されたきっかけは選手たちの人間ドラマといい、取材後も「(選手の動向を)見ちゃいますね。その経験が増えていくことが楽しいと思えたのが、高校野球だったので。自分の中でオリジナルの選手名鑑ができていく感覚が楽しくて」と笑みをこぼす。

人への興味と探究心が、ヒロドアナの活躍を支えているのだと感じた。【遠藤尚子】