高橋一生(42)が27日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた主演映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(渡辺一貴監督)公開記念舞台あいさつで「“黒一生”で、いいじゃないかなと思いました」と自らを“黒一生”と断言した。

一方で、演じた岸辺露伴の露の字の意味を踏まえ「作品は消費されていく。忘れ去られるスピードが速い。すてきだなと思ってもらえたら作品、俳優…スタッフワークは、はかないものかも知れない。俳優として、はかないものと過ごしていきたい」などと俳優業への思いも吐露した。

「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は、荒木氏の人気漫画シリーズ「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作を、NHKが20年に実写化ドラマ化した「岸辺露伴は動かない」の映画版。ドラマ版は20年12月の第1期の放送から3年連続で22年12月に放送され第3弾・全8話を数え、高橋は一貫して主人公の漫画家・岸辺露伴を演じてきた。

美の殿堂ルーブル美術館を舞台に展開される「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を追う、映画の物語にちなみ、自分の黒いところは? と質問が出た。高橋は「もし、今日の衣装…と言うと、何とも言えない答えになる。僕は、ある時、現場で美波ちゃんに『一生さんって黒いですね…井戸の底のように』と突然、言われまして」と、劇中でルーブル美術館職員文化メディエーション部のエマ・野口を演じた、美波(36)に視線を送った。美波から「目の奥が井戸の底のようで…怖いなと」と返されると、高橋は「今、ある舞台のけいこ中なんですが、ある女優さんからも『目の奥が真っ黒だ』と…。『そうでしょうね』と言っていました。“黒一生”で、いいじゃないかなと思いました」と笑った。同じ質問に対し、美波が「私、黒くないんで…先輩を見て、学んでいました」と答えると、高橋は笑った。

そして、高橋は舞台あいさつの最後に、9万2000人の応募を乗り越えて、当選し、映画を鑑賞したファンに呼びかけた。

「現実の世界は…何とか笑っていらっしゃいますけど、つらくて悲しい、寂しいものになっていっているような気がします。ちょうど、その世界の始まりの頃に、僕は岸辺露伴の役をいただきました。この役をいただけたのなら、はっきりした夢の世界、虚構の世界を皆さんにお見せしたいと思いました。皆さんに生きる力を携えて欲しいと思い3年間、やってまいりました。その集大成みたいなものが、この作品には詰まっていると思います」

作品と役を受けた理由、観客に届ける思いを語った上で、現状を憂え、エンターテイメントの未来を見据え、観客に託したい思いを語った。

「作品というものって、すごく消費されやすくなっていて…。俳優はもちろん、作品も忘れ去られていくスピードが、どんどん早まっているように思います。もし、この作品を楽しい、すてきだなと思ってもらえたら…。作品、俳優、スタッフワークは、というものははかないものかもしれない。作る側、見て下さる側で立場は違いますけど、大事にしていただけたらと思います」

高橋は「露伴…露は、はかないものという意味です。俳優として、はかないものと過ごしていきたい。作品を長く大事にしていただけたらと思います」と訴えた。

◆「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」 荒木氏が2009年(平21)に、フランスのルーブル美術館が国内外の漫画家とコラボした企画「バンド・デシネ」のために描き下ろした、初のフルカラーの読切作品で、同美術館に日本の漫画家の作品として初めて展示された同名作品が原作。撮影は22年5月から日本国内で始まり、フランスのパリで大規模ロケを敢行。物語の軸となるルーブル美術館では、日本映画として14年の「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」以来2作目となる撮影も行った。