阪神タイガース監督の専属運転手という異色の経歴を持つ歌手の清水聖史(きよし=61)が29日、大阪市北区の日刊スポーツ新聞社に来社し、3月15日に発売された新曲「酒綴り」のPRを行った。

22歳で一度歌手デビューした後に上京するも、夢半ばで35歳の時に兵庫に戻った。その後は阪神タクシーの運転手となり、和田豊元監督らの専属運転手を務めた。しかし14年、娘の成人式の着物姿をきっかけに「飛騨の花嫁」を作詞・作曲。だれかに歌ってもらうつもりだったが、今回の編曲も担当した作曲家の川村栄二氏から「自分が作った曲は自分が歌え」と言われ、22年ぶりに再デビューを果たした。

いったん歌手の夢を諦めながら「いつかチャンスがあったら」と曲を書くなど音楽活動ができる準備を続けていたからこそかなったものだった。

今回、新たにリリースした「酒綴り」について「中高年の応援歌です」と言う。この曲をもらった瞬間に「これ僕やん」と感じた。歌詞にある「あせるな なげくな 捨てるな夢を」はまさに自身の等身大そのもの。「約40年の歌生活、いろいろなことをしてきた中で、最後に巡りあった詞」だった。「(自分のことを)ふがいないなと思っている男性も多いと思う。家庭をもって、夢を押し殺して、家族のために一生懸命働いて、気がついたら年を取っている。そんな人たちがもう1回夢に向かって進んでほしいなという願いを込めている」と語る。

実際に、自身も再デビューの際に妻に大反対されていた。だが「そこで諦めて、普通の仕事をしていても何も残らない。今までやってきたこと、歌でしか何かを残すことがおれにはできひん」と説得した。

「必死のパッチです」と笑って振り返る妻との交渉を経てつかんだ歌手の仕事。新曲リリースを機に夢を追い続ける大切さを実感していた。