先月末、東京・中野サンプラザで行われた「さよなら中野サンプラザ!令和歌の祭典2023~日本列島!演歌は生活の歌~」を取材した。
同ホールが閉館するにあたり、今年5月から開催されてきた「さよなら NAKANO SUNPLAZA 音楽祭」の一環だ。本当の最終日となった7月2日には、山下達郎がコンサートを行いサンプラザホールは閉館した。
取材した「令和歌の祭典-」は北島三郎(86)を筆頭に、15組の歌手が勢ぞろい。中でも、記憶に残ったのが北島と二葉百合子(92)との共演だ。86歳と92歳の2人が、デュエット曲「栄枯盛衰」を歌唱したのだが、歌の前にはトークを展開。お互いのデビュー当時のエピソードなどを語った。二葉が浪曲師だった父親から、幼少時代から半ば強引に、浪曲を仕込まれた思い出を振り返った。
浪曲は明治初期からブームとなった演芸だ。なかなか若い世代の方々は聴く機会もないだろうが、落語や講談とともに、昭和初期ごろまでは、数多くの浪曲師がいたという。昭和の歌謡界でも、二葉はもちろん、三波春夫、村田英雄ら、浪曲出身の歌手は多かった。
浪曲とはやや異なり、昔から続く伝統的な歌唱曲として、民謡もある。民謡出身の歌手も数多く、三橋美智也、原田直之、金田たつえ、香西かおりらがいる。
前置きが長くなってしまったが、この民謡界から出てきた女性歌手が今春、大手芸能事務所のホリプロからデビューした。
5月31日に新曲「四季花鳥」でデビューした民謡歌手は竹野留里(23)。ホリプロから、演歌・歌謡曲でデビューした女性歌手は、93年に「南の恋祭り」でデビューした井上りつ子(当時22)までさかのぼるという。ホリプロとしても、久々に、歌謡曲の歌手を売り込むことになる。
竹野は、4歳から民謡を始め、さまざまな大会で入賞。民謡日本一の称号をいくつも獲得した。高校時代にはテレビのカラオケ番組に出場。テレビ東京「THEカラオケ★バトル」ではU-18四天王として活躍。抜群の歌唱力は芸能界でも話題となり、大学卒業後の昨春、大手芸能事務所ホリプロと契約。満を持して民謡歌手として「四季花鳥」でデビューした。
「憧れの歌手は和田アキ子さん。パワフルな歌声、カッコよさに憧れています。民謡をやってきたので、高音のロングトーンには自信があります。民謡は練習の時にマイクを使わないので、部屋いっぱいに自分の音を響かせる、すごく空気を一変させられる力があると思っています」。
取材現場でもその歌声を披露してくれたが、確かに、高音のロングトーンは見事なものだった。よく、歌手は腹式呼吸が大事で、おなかから声を出すことが大切と言われるが、民謡歌手は、まさにそのお手本なのだろう。
高校時代のカラオケ大会出場でのどを酷使したこともあり、いわゆる声帯ポリープができてしまった。歌手の職業病でもある。「民謡歌手だけなら、かすれ声も味にはなったのですが、やはりミュージカルでも活躍できるようになりたい」との思いから、今春、デビュー前に、声帯結節を除去する手術を受けた。「13万円ほどかかりました。一括で払わねばならないので、大変でした」と振り返る。手術は成功。「おかげさまで、本当に歌いたい曲を歌いたいように歌えるようになりました。今回、CDのリリースイベントを、北海道と東京でやったんですけど、ファンの方が、声が伸びやかになったねって言ってくださって。聴いてくださる方が、わかってくださったのがうれしいですね」。自ら手術に踏み切ったところに、強い意志を感じた。
インタビューは1時間弱だったが、話しているだけで、彼女の人柄のよさにひかれてしまう。ぜひとも売れてほしい、親心のようにそう思ってしまった。【竹村章】



