<岡田茂さんを偲ぶ>

 岡田茂さんといえば、若かりし頃、東映京都撮影所の“兄貴分”としてプロデューサーの猛者連中をまとめ、時代劇、任きょう、ヤクザ路線でヒット作を連発。東映の黄金時代を築いたことで知られる。

 洒脱(しゃだつ)な人柄で、パーティーの席などでのスピーチも天下一品。日刊スポーツ映画大賞にも第1回から出席、軽妙なあいさつで会場をわかせた。

 00年の映画大賞では丹波哲郎さんが「学校4」で助演男優賞を受賞。そのときに岡田さんは「セリフは覚えない、遅刻は常習の丹波さんだが、今回の演技は素晴らしかった。丹波さんが映画賞を受賞するのは初めてでしょう。長生きしてよかった」とあいさつ。

 これに対し丹波さんが「私の賞は3回目だ。岡田会長はぼけられたのではないか」と切り返して、会場は大爆笑に包まれた。

 外見は少しコワモテだが、相手への気配りを忘れない繊細な人だった。このスピーチも、長年映画界でともに闘ってきた盟友丹波さんへの、岡田さん流の祝福だった。【元映画担当・田口辰男】