<第12回日刊スポーツ・ドラマグランプリ受賞者発表>

 「第12回日刊スポーツ・ドラマグランプリ」の助演女優賞は、フジテレビ系「ラスト・フレンズ」で女優上野樹里(22)が受賞した。ヒロイン長沢まさみにひそかな恋心を抱くボーイッシュな女性にふんし、代表作「のだめカンタービレ」と正反対な役を演じた。台本をもらい、すぐに自分で髪にはさみを入れショートに変身。視聴者から「上野樹里とは思わなかった」との声も届く熱演だった。

 上野が「ラスト・フレンズ」で演じたのは「自分は性同一性障害ではないか」と悩みを抱くボーイッシュな女性、岸本瑠可(るか)。髪形は「人生初」というショートカットだった。「台本を読んで感動して早く瑠可になりたくて。本に『ショートカット』と書いてあったので、家にあった100円ぐらいのハサミで自分でジョキジョキ切りました。まず、髪が長いと瑠可の気持ちになろうにもなれないだろうと」。

 髪を切ったのは収録開始の2カ月前。出演映画のプロモーション(宣伝)をすべて終え、仕事の上でも迷惑をかけないことまで計算していた。「前髪が短くなることでまゆを整えなくちゃと考えたら、自然とショートに合ったキリリとしたまゆになって。格好も行動も変わってきました」と振り返る。

 代表作「のだめカンタービレ」では、のんびりした主人公『のだめ(野田恵)』を演じた。今回は、しゃべり方、立ち振る舞いなどすべてにおいて『のだめ』とは180度違う設定。同一人物が演じているとは思えず、視聴者からも「新人のカワイイ男の子かと思って出演者の名前を見たら上野樹里だった」との声も多数あった。

 「演技の幅じゃないですけど『のだめはキンキンしてうるさい』という方が『ラスト・フレンズ』ですごく親近感を持って共感してくださったり、『のだめを見ていなかったけど、瑠可が好きになってのだめを見ました』という方もいて。同じようなキャラクターじゃない役を『この子だったらできるかも』と思ってきっかけを与えて下さったスタッフの方々に感謝していますし、それを信じて自分も応えようと頑張って、本当にいい経験ができたと思います」。

 天性を感じさせる片りんは、受賞の写真撮影にも表れた。トロフィーの持ち方も徹底的にこだわり、数回テストを繰り返した。常に、カメラの向こうに茶の間やファンを意識するプロ根性。汗だくのカメラマンに「ねばっていただいてありがとうございます。A型で気になっちゃうとだめなんですよね」と笑顔でペコリ。「長い目で役者をやって『こういうことをしたい』『これは苦手』ということが少しずつ出てきて。これから、どういう女優になっていくか楽しみにしていただけたら」。収録や撮影の裏側まで見ていたい人だった。【岩田知代巳】

 ◆上野樹里(うえの・じゅり)1986年(昭61)5月25日、兵庫県生まれ。01年「クレアラシル」のCMでデビュー。02年、NHK「生存~愛する娘のために~」でドラマデビューし、03年、NHK朝の連続テレビ小説「てるてる家族」で注目される。04年、映画「スウィングガールズ」で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。06年、フジテレビ月9ドラマ「のだめカンタービレ」がヒットし、07年度エランドール賞新人賞を受賞。167センチ。血液型A。

 [2009年4月30日9時29分

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