「心よりおわびし、深く反省しています」。全治2カ月の大けがを負った歌舞伎俳優市川海老蔵(33)が7日、退院し、都内で行った会見で計11回も頭を下げ、涙目で謝罪した。

 命の危険を感じた海老蔵は、家族の尊さを痛感していた。黒のスーツとネクタイで記者会見し、何度も口にしたのは、ファンや関係者への謝罪だけでなく、家族への思いだった。妻の小林麻央(28)とは、夫婦の絆が深まったと言い、両親には6日の誕生日に「生んでくださってありがとうございます」と感謝を述べたと明かした。

 殺される!

 死ぬかもしれない…。泥酔したはずの脳裏に死の恐怖がよぎった海老蔵が、一目散に逃げた先は、妻の待つ自宅だった。携帯電話も自宅のカギもなくしたが、どうにか玄関をこじ開けて、はだしのまま部屋の妻のもとまでたどり着いたという。報道陣に「先に病院や警察は考えなかったのか?」と問われると、心底驚いたように目をむき「はぁ~。まったく僕の視界に入ってきませんでした。冷静さがない中で、家に帰らなくては、妻のもとに戻りたい、戻らなくてはという一心でした」と、事件直後について振り返った。救急車を呼ばずに110番したのは「非常に混乱してて、妻もほとんど僕が誰だか分からないほど顔が腫れていたから」と、生々しく説明した。

 ショックも大きいはずの麻央に、かいがいしく介抱してもらっている。「結婚というものをさせていただいて日が浅い中、ふがいない私のことでつらい思いをしているのに、そんな中、妻はそんな表情も出さずに、ずっと私のそばで看病してくれる…。その姿になおさら胸が痛みます」と、感謝と謝罪の念でいっぱいだ。病室では「孝俊さん、生まれ変わらないといけないですね。一緒に頑張っていきましょう」と諭されたという。「本当に温かく看病をしてくれてます。僕は夫婦のきずなは深まっていると思います」と、少しだけ自信ありげに言い切った。

 事件について「当然だ」と断罪され、自分のために謝罪に回る父団十郎(64)には「言葉では言い表せませんが、親不孝をしたと感じています」と頭が上がらない。「私としては、誕生日に両親に祝ってもらうのは当たり前と思っていたのですが、生んでくださってありがとうございましたと自然と言えたことが、謝罪にはなりませんが、その後の父と母の顔で、思いが伝わったのではないかと思います」。言葉を詰まらせながら語るところに、市川家の看板の重みを、いまさらながらに再確認したようすがうかがえた。

 [2010年12月8日8時59分

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