第146回芥川賞を受賞し、“不機嫌”会見で話題になった小説家田中慎弥氏(39)の「共喰い」が映画化され、来夏公開されることが28日、分かった。人間の暴力と性の衝動を描いた作品で、主演は若手俳優菅田将暉(19)が務める。

 著書の初映画化。田中氏は素直に期待を口にした。「決して万人受けするストーリーではないと思いますが、そのように限定された世界が映画によってどのように広がってゆくのか、原作者として、読者として、観客として、楽しみにしています」。その一方で「小説の『共喰い』こそが一番だと私は思っています。映画に携わる人たちは『共喰い』は、映画のための物語じゃないかと考えていることでしょう。勝負です」と宣言してみせた。

 メガホンは、映画「EUREKA

 ユリイカ」の青山真治監督が取る。「文章から立ち上る土地のにおい、人間関係、何もかも勝手知ったる世界のような。原作が田中氏にしか書けない小説だったように、本作も自分にしか作れない映画になってほしい」。

 主演の菅田は「仮面ライダーW」で史上最年少ライダーを務めた若手俳優。あどけない表情が人気だが、本作では暴力的な父親を嫌悪し、その血を引くことを恐れ葛藤する高校生、遠馬を演じる。激しいセックスシーンにも挑む菅田は「こういった濃厚で生々しい世界観を持つ作品への挑戦が、役者として、男として深さをもたらしてくれる転機だと信じ、命を懸けて遠馬を演じたい」と強い意気込みを語っている。

 山口県下関市在住の田中氏と、対岸の北九州市出身の青山監督。作品は北九州で撮影し、光石研、田中裕子ら実力派も参加する。