ミホノブルボン、サイレンススズカ、キタサンブラック…。各時代に、個性的で強い先行馬がいました。タイトルホルダーはそういった馬たちに肩を並べたか、あるいはそれ以上かもしれません。速いペースで前へ行き、速い時計で押し切る。スピード+スタミナ。現代競馬における最強の形と言っていいでしょう。

スタートを決めて、横山和騎手は押っつけて行きました。序盤から手綱を押しても掛からない。迷いのない騎乗は馬への信頼の証しでした。パンサラッサが来なければハナを切ればいいですし、実際には主張してきましたので、スッと2番手へ。そこで折り合えるのがこの馬のすごさです。まるで自動車。アクセルとブレーキが自在です。

パンサの1000メートル通過は57秒6。その2~3馬身後ろのタイトルは58秒ちょっとくらいでしょうか。98年宝塚記念を逃げ切ったサイレンススズカは58秒6。レコードを保持していた11年アーネストリーは58秒7の2番手。当時と今では馬場も違いますが、今年がかなり速かったのは間違いありません。それでもタイトルは4角を持ったままで上がってきて、上がり3位、36秒1で押し切ります。2分9秒7のレコード。この競馬をされては、前の馬も後ろの馬もお手上げです。

かつてミホノブルボンの戸山調教師は、ダービーの2400メートルを800メートル×3と考え、それぞれを50秒を切るくらいで走れば勝てる、といった考え方をされていました。人が馬に乗るのですから、机上の計算通りにはいきませんが、タイトルはそれができる馬かもしれません。ブルボンのダービーから30年。タイトルの完勝を見て、戸山先生の話を思い出しました。凱旋門賞を勝つなら、こういう馬かもしれません。

1番人気エフフォーリアは、大阪杯(9着)よりはゴール前で伸びていましたが、6着でした。もう少し絞れてくるかと思いましたが、原因の究明はなかなか難しいでしょう。秋に地元関東でどんな走りを見せるのか。復活を祈ります。

2着ヒシイグアスは大事に使われてきたため、6歳でも馬が若いですね。条件が合えば、G1に手が届く馬でしょう。3着デアリングタクトは立ち直ってきました。秋こそ完全復活です。(JRA元調教師)

タイトルホルダーに騎乗し宝塚記念を制覇した横山和生騎手はファンの声援に応える
タイトルホルダーに騎乗し宝塚記念を制覇した横山和生騎手はファンの声援に応える