スコアブックを書くペンが止まった。試合開始直前、いつもと違う「音」に耳を疑った。オリックス山岡泰輔投手(25)が16日ロッテ戦(京セラドーム大阪)で、入団時から流してきた登場曲を変更した。

普段なら音楽グループ「AAA」の「虹」が流れ、気持ちが高ぶる瞬間。この日、耳に入ってきたのは「Way Back Home」だった。

「“ギンタ”が見に来てくれていたので『ありがとう』という感じで変えてみました」

すみません、山岡投手。“ギンタ”…とは? 勉強不足を解消すべく、調べてみると「速攻」で答えにたどり着いた。

正体は、DJ集団「レペゼン地球」の「DJ GINTA(銀太)」。ツイッターのフォロワーは73万人を突破し、インスタグラムのフォロワーも42万人を超える人気を誇るアーティストだ。

「たまたま大阪に来ていて『もし投げるなら試合に応援いくよ』と連絡が来ていたんで。向こうも忙しくて、あんまり試合を見に来ることはないので。せっかくホーム(本拠地)に来てくれたので『変えるわ~』ってね」

プレーボール前の投球練習中はDJ GINTAがリメークした「Way Back Home」のリズムに乗った。勢いそのままに好投。勝ち星こそつかなかったが、7回5安打無失点で、9奪三振。最速150キロを計測するなど、熱のこもった118球だった。

山岡といえば「AAA」というイメージ。練習に持参するリュックには、AAAファンが手にするキュートな紫色のパンダのキーホルダーをつけているほどだ。そうか、登板前に「虹」がもう聞けないのか…。そう思っていたが「あの日、限定ですよ。元に戻します」と笑って教えてくれた。

親交のあるDJ GINTAが観戦してくれた「お返し」のための登場曲変更だった。そんな山岡の気遣いは報道陣にも向けられる。「最近、ツイッター始めましたよね? 結構フォロワー増えてきてますね。あの写真、自分で撮ってるんですか? 記者ってカメラもするの?」。ある日突然、そう話しかけられた。その瞬間、山岡に幅広い交流がある理由が分かった。【オリックス担当=真柴健】

※ツイッターアカウントは@nikkan_mashibaです。