田村藤夫のファームリポート

斎藤佑樹10年目の歯がゆさ、生き抜く術を/田村藤夫

<ファームリポート>

ソフトバンク、阪神、中日で2軍バッテリーコーチを務めた日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(60)が、22日に行われた日本ハム-西武戦(鎌ケ谷)を取材し、プロ10年目を迎えた斎藤佑樹投手(32)の現状をリポートした。

日本ハム斎藤佑樹(2020年6月4日撮影)
日本ハム斎藤佑樹(2020年6月4日撮影)

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斎藤のピッチングを見られるかなと思って、久しぶりに鎌ケ谷へ足を運んだ。熱心なお客さんもたくさん入っており、スタンドには熱気があった。日本ハムの1軍バッテリーコーチとして練習で訪れて以来の鎌ケ谷は、改めて野球に打ち込める環境が整っていると感じた。

斎藤は中継ぎで登板した。先頭打者に三塁打を打たれ、続く打者にセンターへの犠牲フライを許して失点。後続はセンターフライ、ライト前ヒット、ライトフライで、1回を2安打1失点という内容だった。

こうしてスラスラと振り返れてしまうのは、ある意味ちょっと寂しい気がする。なぜなら、打たれたのはいずれもストレート。私が見ていた位置が三塁側ベンチ上のスタンドだったため、球種、コースが正確に判断できない。それでも、斎藤の苦しいピッチングは手に取るように分かった。

まず、初球でツーシームかスライダーでストライクを取りにいくが、このカウント球がことごとくボールになる。120キロ前後はスライダーだと思うが、ワンバウンドになる球が多く、ストライクが取れない。

そして打者有利のカウントで、ストライクを取りにいくしかない状況になってから、投じたストレートを打たれている。犠牲フライを含めた3アウトはいずれも外野への飛球だったが、すべて芯でとらえられていた。仕留められていれば、どれも長打にされてもおかしくないボールだったと思う。

カウントを作ってから勝負球を打たれるのと、カウントが作れずに打たれるのは大きく異なる。この試合での斎藤は最速135キロ。そしてカウント球、勝負球、ともにストライクが取れない。捕手としてはどの球でストライクを取り、勝負すればいいのか、リードに困るだろうな、と思いながら見ていた。

斎藤のピッチングをスラスラと思い出せるのは、カウントがつくれず、ストレートを投げるしかない状況でスイングされるパターンを繰り返していたからだ。球威はなくとも、丁寧にコースを突き、緩急を交え、変化球とのコンビネーションを加えたり、クイックを使ったり、フォームの中でタイミングをずらす工夫をするなど、プロ10年目の投球術というものを見たかった。

斎藤は表情も変えずに投げていた。その心の動きを見せまいとするところに、自分のイメージと違うボールに対する歯がゆさを感じた。見ている側の勝手な感想で、斎藤本人はもっと違う感情の中で投げていたかもしれない。ただ、私はスタンドからじっくり見てそう感じた。

右打者の胸元を起こしてみる、左打者の足元を攻めてみる、変化球でストライクを取れる球を覚える。どれもこれも、プロ10年目の投手に指摘するとなれば、今更なんだよなと、ため息が出てきそうだ。

本人が一番歯がゆいだろうと思う。何度も同じことに挑戦したり、新しいことを試したりしながら、今年もファームで打者と向き合っているのだとは思う。それでも、プロの世界で1軍目指してユニホームを着ている以上は、日々成長を目指して汗をかくしかない。

名前は書かないが、同じ右投手で球威はないが、コントロールを武器に現役を全うした投手がいた。今の斎藤と同じくらいの球威だったと思う。それでも、シュート、スライダーを駆使して1軍打者と対等に渡り合っていた。私は右打者だったが、その投手が左肩を打者の方へ入れて投げ込んでくる瞬間、どうしても投球が体に向かってくる恐怖がよぎり、外のスライダーに届かなかったことを思い出す。それもプロで生き抜くひとつの術(すべ)だったと、今になっては感じる。

「今日は大丈夫かなあ」。私の近くにいたファンの方がそうつぶやいたのが聞こえた。心配もされており、期待もされているのだ。それだけでも、プロとして結果を出そうと努力する原動力になるはずだ。(日刊スポーツ評論家)

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