元中日投手でわらび餅店(名古屋市東区)を経営する山田喜久夫氏(48)が新型コロナウイルスとぎりぎりの闘いを続けている。14年3月、ナゴヤドームにほど近い場所に開業した「喜来もち ろまん亭」は時間短縮しながらゴールデンウイーク(GW)最後の6日も営業。売り上げ的にも厳しいが、昨年8月に腎移植手術を行ったため、ウイルス感染に細心の注意を払いながら店頭に立つ日々だ。

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例年のGWなら店の周辺も多くの人が行き交う。コロナ禍がなければ4日からナゴヤドームは巨人と3連戦。来店者もひっきりなしだったはずだが今年は違う。「ありがたいことに常連の方などに来ていただいていますが、さすがに開業以来、もっとも厳しい状態が続いています」。電話口の山田氏の口調はつらい胸の内をあえて隠すかのように優しいトーンだった。

厳しいのは店の営業状態だけではない。今春、東海大に進学した長男斐祐翔(ひゅうま)君と入れ替わるように三男竜友将(りょうま)君が母校・東邦に入学。次男聖将(しょうま)君は同校3年となり、3人とも野球部の後輩に。家族のためにも簡単に営業を止めるわけにはいかない。朝はこれまでより30分早く出店。仕込み前の消毒作業が新たな日課となった。営業中は換気のため入り口を常に開放。感染リスクを低減するため主治医からアドバイスを受けての対応だ。

昨夏に腎移植手術を行い、現在も定期的な通院が続く。「免疫力が低下しているので、主治医からはできるだけ感染しないようにと言われています」と山田氏。新型ウイルスは感染すると基礎疾患者の重症化率が高まると言われるだけに、接客にも細心の注意を払いながら今後も綱渡りの営業を続けていく予定だ。

今春から試合開催日にはナゴヤドームにより近い場所での臨時出店や東京進出も決まっていたがいずれも凍結状態。「見えない敵との闘いなのでしようがない。だれが悪いわけでもないですから」。そう話す山田氏は母校からドラフト1位で入団した石川昂や4年目の藤嶋ら中日の後輩にも「いつ開幕するかわからないので大変だと思いますが、準備だけはしっかりやるしかない。頑張ってほしいです」とエールを送った。【安藤宏樹】

◆山田喜久夫(やまだ・きくお)1971年7月17日生まれ、愛知県出身。東邦高ではエースとして88年センバツで準優勝し、翌89年春優勝。同年ドラフト5位で中日入団。主に中継ぎとして活躍。99年、広島に移籍し同年限りで引退。プロ通算222試合に登板し6勝8敗、防御率3・76。左投げ左打ち。引退後は横浜、中日で打撃投手を経て、14年にわらび餅店開業。

◆「喜来もち ろまん亭」 中日退団後、知人のわらび餅店で修業し14年3月に開業。営業時間は午前10時から売り切れまで。月曜日定休(イベント開催時は営業)。住所は名古屋市東区矢田南2の7の5。電話052・722・3310。