2022年のプロ野球が25日、午後4時プレーボールの楽天-ロッテ(楽天生命パーク)で開幕する。ロッテのドラフト1位松川虎生捕手(18=市和歌山)、楽天ドラフト2位安田悠馬捕手(22=愛知大)がともにスタメンマスクをかぶる。松川は高卒新人捕手の開幕スタメンとしては、2リーグ制以降では史上3人目の快挙だ。重圧の一戦にどう臨む。日刊スポーツの独占インタビューに答えた大物18歳は、意外にも…。
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緊張具合を尋ねたのは、開幕戦が始まる50時間前のことだった。「いや、緊張は特にないっす」。では怖さは。「怖さですか? 特にないです」。松川は至って真顔だ。
「いや、まだ緊張してないだけじゃないっすか。でも、試合前とかはめちゃめちゃ緊張していると思います。1日前とかは何も気にしないので。本当に試合前だけだと思います」
2年連続2位。優勝を狙う大事な1年に、井口監督が開幕マスクを託せると判断した18歳。肝のすわり方は並じゃない。
「足が震えるとか今までなかったですけど、今やってる甲子園、センバツではちょっと緊張した部分はあったかなと思います。目標の甲子園っていう場所でもありましたし、相手を何としても倒す、そういう強い気持ちがあったので」
活字にするとビッグマウスに見えるが、所作は18歳とは思えぬほど丁寧だ。開幕投手を務める石川とのバッテリーが評価された。ベテラン独特の間合い、テンポにしっかり合わせた。塁審に打者のスイングアピールをする時、指をそろえ右手を差し出すしぐさも話題になった。相手へのリスペクトが随所に。母校・市和歌山の半田真一監督(41)に感謝する。
「高校に入って甲子園を目指す中でも、自分だけではどうにもできないですし。半田先生からも『しっかり周りを見ながら行動することがすごく大事だ』と言われましたので。相手のことを考えながら、という部分は意識して高校時代はやったかなと」
教えを忘れず、力に変えるために。プロ入り後の打撃用の手袋や用具の差し色に、緑色を選んだ。市和歌山のユニホームの象徴的な色で、井口監督もドラフト会議では緑のネクタイを締めていた。
「感謝の気持ちしかないので。そういう部分でちょっとでも高校時代の緑を入れて。苦しい時に考えながらできるんじゃないかと思いましたし、何か力になってくれるんじゃないかなと感じて入れました」
石垣島キャンプをA組(1軍)でスタートし、アピールし、第1の目標を勝ち取った。3・25のスタメンに名を連ねれば、高卒捕手の開幕スタメンマスクは史上3人目となる。名前が球史、球団史に刻まれる。
「そうですね…特にそういう部分は意識してないんですが、しっかり100%以上の力を出せるように準備だけはしっかりして、入りたいなと思ってます」
プロ野球ファンへの自己紹介の一戦。どんな松川虎生を見てもらいたいか。
「捕手としてのテンポの良さだったり、投手のいいところをしっかり引き出せる部分を見てもらいたいですし。とにかく全力でやってるプレーを見ていただけたらなと思います。一瞬一瞬しっかり戦って、チームに貢献できるように」
午後4時、プレーボール。「さすがに最初は緊張すると思いますが、それをいい方向に持っていけるように」。安らぎのグリーンで落ち着きながら、名捕手への道を歩みだす。
◆新人捕手の開幕戦先発 2リーグ制後は16年戸柱(DeNA)まで過去11人おり、高卒は55年谷本(大映)と06年炭谷(西武)の2人だけ。開幕戦に先発出場した新人の守備位置別人数を見ると、捕手は指名打者の3人に次いで少なく、過去13人の「新人開幕投手」よりも「新人開幕捕手」の方が難しい。開幕戦で両軍の捕手が新人は、春秋制だった1リーグ時代の38年秋に吉原(巨人)と中田(南海)の例があるが、2リーグ制後はまだない。
◆松川虎生(まつかわ・こう)2003年(平15)10月20日、大阪・阪南市生まれ。中学時代は貝塚ヤングで、市和歌山でもバッテリーを組んだDeNA小園らと全国制覇。高校通算43本塁打を誇り、21年ドラフトでロッテから単独1位指名を受けた。好物は焼き肉。天敵はセミ。178センチ、98キロ。右投げ右打ち。
<取材後記>
最近「人生2回目」あるいは「2周目」という言葉をよく聞く。初めての体験なのに何もかも分かっている-。そんな人のことを言うそうだ。ならば、松川は“プロ野球選手2回目”と思えてしまう。
本人は「まだまだ勉強することだらけ」と言うものの、石垣島キャンプからここまで“減点”が目立たない。井口監督も「一番心配していたのはリード面。(ロッテの投手のことを)知らない中で受けるわけですから、そこが思った以上に良かった」と適応力をベタ褒めする。
「チームが掲げているように頂点をつかむために一瞬一瞬を本当に大事に」
頂点を、つかむ。チームスローガンを実にさらっと質疑応答に交ぜるあたりも、自分自分になりがちな思春期とは思えない達観ぶり。少々複雑な質問には50秒間「うーん」と上を見て「難しいッス」と笑う一面も。押し引き巧み、百戦錬磨の18歳だ。【金子真仁】



