“師匠”が大仕事をやってのけた。負ければ終わりのWBC準々決勝イタリア戦で、侍ジャパン岡本和真内野手(26)が1点を先制した3回2死一、二塁で、大きな追加点となる左翼への3ラン。大観衆を沸かせると、5回にも右中間二塁打で走者2人をかえし、東京ドームも最高潮に達した。1人で5打点。日本を代表する右打ちスラッガーが世界一への虹を架け、素の自分で仲間と喜び合った。

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泳ぎながらも、岡本の打球が舞い上がった。東京ドームで見慣れた光景に反応は素早い。歓声の大きさは一気に100デシベル超に。滞空時間と比例するように、声量もクレシェンドに。最後に白球が左翼席に落ちると、この日最大の104・2デシベルが破裂した。

言葉は少ない。「球種は分からないですが、ランナーをかえせて良かったです」。仲間たちには素の笑顔を見せた。侍の後輩たちから「師匠」と親しまれる。もう、壁はなかった。

智弁学園時代から日本代表経験はある。どこかすっきりしない感情があった。「よそ行きになりやすいというか、かっこつけるというか。代表に行くとそうなりやすかった」。周りを気遣うあまりに、普段通りの岡本和真が出なかった。

もう違う。宮崎での強化合宿は毎朝一番乗り。チームバスより早く、決まった時間にタクシーを手配して準備に時間をかけた。チーム関係者も「岡本が一番練習していた」と証言するほどの姿勢に、心打たれる人も多かった。打率2割と苦しんだ1次ラウンド。自分と向き合い続けて、感覚をつかみつつある中での快音。心許せる仲間たちがベンチで興奮して待っていた。

さらに呼応もしたか。5回に“弟子”の5番村上が今大会初適時打を放つと、ますますボルテージが高まる。直後の初球、ねらいすましたかのように右中間を真っ二つに。この日5打点となる2点適時二塁打を放つと、その瞬間の歓声はこの日の最大を更新。105・1デシベルがさく裂した。

二塁ベース上でコショウをパラパラッとする岡本に、ベンチの目が輝く。日の丸にかける強い思いが、ようやく形になった大一番。アメリカへと続く夢の橋を架けた。世界一をつかむため、太平洋を堂々と渡る。【小早川宗一郎、金子真仁】