プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月15日付紙面を振り返ります。1993年の1面(東京版)は初の外国人横綱となった曙が琴錦を押し出しで下し、横綱として初白星を挙げた様子を伝えています。

 ◇ ◇ ◇

<大相撲春場所>◇初日◇14日◇大阪府立体育会館

 曙貴新時代の幕が開けた。新横綱曙(23=東関)は新横綱場所初日の緊張を立ち合い、両手のかち上げ一発で吹き飛ばした。琴錦の重い腰も一瞬にして反り返る破壊力。昨年春場所2日目以来、6場所、370日ぶりの横綱土俵入りも披露。わずか2秒7の圧勝劇で3連覇へ豪快発進した。

 主役の座はだれにも渡さない。曙は自らの豪快な相撲内容で館内のファンにそう主張していた。204センチ、212キロ。史上初の外国人横綱、緊張する新横綱の初日と両肩にのしかかってくる重圧を見事にパワーで粉砕した。最近5連勝中だが、それ以前は7連敗の苦手琴錦への不安も感じさせない。土俵に上がれば、たった一発、ホンの一瞬で相手を吹き飛ばした。

 記念すべき「綱・初白星」は、全体重を乗せたかち上げで決まった。「落ち着いていた。かち上げは思いっ切りいくこと、という考えから」。迷うことなく、琴錦のあごにぶちかました。こん身の一撃に、重心が低く腰の重い琴錦の体が簡単にのけぞった。「納得いく相撲だった」。文句ない横綱相撲だ。右のど輪で押し込み、一直線に押し出した。

 大入り満員の館内が揺れ、役員室も感嘆の声しか上がらない。「オー、足が出るな良く、オー」。出羽海理事長(元横綱佐田の山)が叫ぶ。そして、「(横綱)合格だね、合格だ」と力を込めて曙の新横綱場所の門出を祝福した。日本相撲協会のトップとして、自らが送り出した初の横綱。1909年(明42)夏場所に優勝制度制定後、43横綱が誕生したが、新横綱場所のプレッシャーに8横綱がのみ込まれ、初日黒星を喫した。28年前の65年(昭40)のこの春場所で新横綱場所を迎えた理事長自身も重圧に押しつぶされ、苦いデビューだった。それだけに喜びもひとしおだ。

 気合の入った朝げいこをこなした。同じ区内に宿舎を構える友綱部屋から同期生の十両魁皇が「場所中は初めて」(曙)という出げいこにやってきた。同じ88年春場所初土俵。5番胸を出したが「いいけいこになったよ」と顔をほころばせた。懸賞金の数でも、曙11本に貴ノ花8本。横綱への注目度の高さを示した。

 初日の取組はハワイへ衛星生中継された。NHK衛星放送の画像が故郷のCATV「チャンネル13」を通じ、現地時間13日午後9時過ぎから放送された。会心の横綱デビュー戦についつい笑みがこぼれた。「勝ち名乗りがいつもと違ったね。気持ち良かった」。東支度部屋の一番奥。横綱の正位置に陣取った曙の快進撃が始まった。

※記録と表記は当時のもの