21歳の東前頭12枚目琴勝峰(佐渡ケ嶽)が、台風の目になる。元横綱朝青龍のおいで新入幕の西前頭16枚目豊昇龍を突き落とし、出世を争う同学年のライバルを破って6勝1敗とした。

実家が経営する千葉県柏市の居酒屋が、コロナ禍で来店客が激減。応援する両親のためにも元気な姿を届ける。琴勝峰、大関貴景勝、新入幕の翔猿が1敗をキープ。大関昇進を目指す3関脇は総崩れとなった。

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幕内では初対戦となる好敵手の猛攻をしのいだ。琴勝峰は立ち合いで豊昇龍を突き放せず、右を差されて攻め込まれたが、191センチ、156キロの大きく柔らかい体には余裕があった。「差されて(体勢が)悪くなったけど、落ち着いていた」。土俵際で左から逆転の突き落としを決めた。2場所連続で1敗のまま中日に突入。まだ前半戦ながら、先頭集団に並んでいる。

同学年の新入幕に、幕内2場所目の貫禄を見せた。豊昇龍とはアマチュア時代の高校3年で対戦して敗れたものの、プロでは4戦4勝。「競い合いながらお互いを高め合える存在になりたい」。元横綱大鵬の孫、幕下納谷ら有望株がそろう1999年度生まれ。“黄金世代”の先頭は譲れない。

コロナ禍で苦しむ両親に勇姿を届けたい。実家は地元の柏市で大衆居酒屋「達磨(だるま)」を50年以上経営しているが「大人数でのお客さんがかなり減った」と店主で父の手計学さん(55)。緊急事態宣言の解除前の5月時点では、売り上げが昨年比で約6割減った。

新入幕で8勝を挙げた7月場所後、実家に戻って英気を養った。小さい頃からの好物というハマグリやアサリが入った辛口の鍋を食べて“海鮮パワー”を注入。その際、先場所獲得した懸賞を両親に1枚ずつ渡した。その懸賞袋は居酒屋の店内に飾られ、「お客さんも珍しがって喜んでくれる」と父学さん。親孝行を忘れない新進気鋭の21歳が、混戦場所を盛り上げている。【佐藤礼征】