特別連載「ザ・真相-AKB48選抜総選挙」の第4回は、13年の第5回総選挙の篠田麻里子の電撃的な卒業発表についてです。史上初めて総選挙で卒業が発表された事件は、篠田が1年かけて計画していたサプライズでした。

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 「私、篠田麻里子はAKB48を卒業します」。今や総選挙スピーチで人気メンバーが卒業を表明するのは普通の光景だが、5年前では全く想像もできない出来事だった。当時はすでに最年長の27歳で、予想できたタイミングだったにもかかわらず、篠田の発表の衝撃度は最大級だった。

 そもそもファンは「次のシングル曲を歌ってほしい。今後ももっと活躍してほしい」と願って投票する。そんな祝福の舞台でアイドル業の店じまいの告白をするのは、タブーなはずだった。この禁じ手を実現させたのは、ほかでもない篠田の力。1年をかけた綿密な計画で、その決意に説得力を持たせたからだった。

 1年前の第4回総選挙。篠田は、これまた過去に例を見ない挑発的なスピーチで驚かせていた。「後輩に席を譲るという方もいるかもしれません。ですが、私は席を譲らないと上に上がれないメンバーはAKB48では勝てないと思います。つぶすつもりで来てください!! 私はいつでも待っています」。初めて全国放送で生中継された総選挙で、プロレスラーのマイクアピールのようなケンカをふっかけて「アイドル=かわいい、ぶりっこ」という既成概念を吹き飛ばした。AKB48の奥の深さを、世間に証明した瞬間だった。

 実は、このスピーチは、額面通りの後輩への叱咤(しった)激励でありながら、同時に自らの卒業への伏線だった。卒業から数年後に篠田は「13年の総選挙で卒業発表するのは、1年前から決めていました。そこに結末を持っていくために、それまでにAKBに何かを残すために、あのスピーチをしました」。

 今やアイドルがモデルを兼ねるのは当たり前になったが、その先駆者でもあった篠田の、見事なまでのセルフプロデュース力が、総選挙をより劇場型に進化させる一翼を担った。エポックメーキングの1つだった。【瀬津真也】